1-2・遠州弁わ・ん行

ん その2

「ん」。「ない」の代わりに使用する。その1で「に」として使うと説明したがそれとは違う使い方を補足追加。

出来なくする→できんくする

しないで帰る→しんで帰る

脱線するが、「せずに帰る」という「ず」の場合には「なし」を使い「せなし帰る」という風になる。

「買わないで帰る」なら「買わんで帰る」

「買わずに帰る」なら「買いなし帰る」

と変えるのがスムーズである。

では、「に」と「ない」が「ん」になるというのなら

「買わないに越したことはない」を

「買わんん越したこたない」と言うかというとそれはない。

例文(遠州弁では「ん」の連発が小気味良いという感覚がある。)

「うちんゆうこんとんちんかんかもしれんだん なんしょあんたんとこんのだけはホントちゃんとしんとかんて。」

  (私の言う事がとんちんかもしれないけどとにかくあなたのところのだけはちゃんとしないといけないんだよ。)

「なんでうちんのだけちゃんとしんとかんよを。」

  (どうしてうちのだけちゃんとしないといけないの?)

「なんでって他んの見りゃ分かるじゃん。しょんないのばっかだら?」

  (どうしてって他のを見れば分かるでしょ。使い物にならないのばかりでしょうに。)

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わりかし

方言とかではなく俗語だそうで「比較的」とか「割合」とかいう意味であるそうな。昭和30年代あたりに上映された映画から広まったという説明書きをなんかで見た様な記憶あり。造語なのかどうかは露知らず霧の中。「割り方」の変形とも書かれてあったような。辞書では「わりかた」で載ってることが多そうだ。

それ以外の用途としては(あまり変わらないけど)「意外と」・「結構」・「まあまあ」とかいう使い方もする遠州では定着した感のある言葉である。というか「わりかた」なんて言葉使わない。

真面目な時に言いたい場合は「わりあい」を、普段の砕けた感じでは「わりかし」でという使い分けをする人が多い。男女共に使う。

例文

「わりかしいけるじゃん。そう思わん?」

  (意外といけるじゃないの。そう思わない?)

「まあの。いけんこたあないの。」

  (そうだね。まずいということはないかな。)

「なんか不満?」

  (何かご不満でも?)

「そういう訳じゃないだけえが喰い合わせがの。」

  (不満ってほどでもないんだけど、どうも喰い合わせがね。)

「別に悪くありもしん。うなぎと梅干じゃあるまいし大丈夫だよを。」

  (別におかしくないでしょうに。うなぎと梅干じゃあるまいし。大丈夫でしょう。)

「つうても揚げパンの具がプリンってなんかなあ。」

  (そうは言っても揚げパンの具がプリンってのはなあ。)

「いいじゃん別にい。コロネにアイスっつうのもありだで。」

  (構わないでしょ。コロネにアイスだってありなんだから。)

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わしけえ?

俺かい!って勢いで意外性を感じたと表現する言葉。「わしけ?」と短く切ると俺かよっ!という感じになる。

「わしけえ?わしんゆうだけえ」だと、「俺かよっ!俺が言うのかよ。」という感じになる。アクセントの強調部分は「わ」と「けえ」になる。「わ」と「け」で「え」が下がると「(やっぱり)俺なんだ」といった意外性はがなく予想されたというニュアンスに変わる。

「わしかあ?」というのもよく使われたりもする。「わしかえ?」とかだと江戸風味が増すけれど殆ど遠州で使う表現ではない。

注意点として遠州人の基本が自分のことを普段「わし」と言ってるわけではなく、共通語的表現の「俺」・「自分」・「僕」などが普段使いとしては多く使われているのでそこんとこはあしからず。ただし「わし」は使うとなれば男女兼用で女子でも遠州人は使う。

例文

「明日のさあ、用事。どうも駄目んなりそうっぽいやあ。」

  (明日の用事なんだけどどうも駄目になりそうなんだ。)

「あっそお。でも○○さんどがんこ楽しみにしとったにい。」

  (ああそうなの。でも○○さん物凄く楽しみにしてたよ。)

「だでいいづらいだよ。まだどっち転ぶか分からんもんで。だけどいきなし明日んなって『今日やんぴね。』なんていわれやせんじゃん。」

  (だから言いずらいんだよね。まだ確定じゃないんだけどだからと言って当日急に「中止になった」なんて言えないよね。)

「ほうだいねえ。一応先言っといた方が無難かもしれんねえ。」

  (そうだよねえ。とりあえず先に一言言っておいた方がいいかもね。)

「ほうだらぁ。だもんでさあ、あんた頼まれてくれんかねえ。」

  (でしょう。だからねえ、あなたから伝えといてくれないかな。)

「わしけえ?わしんゆうだけえ?んーまあええけど。」

  (私?私が言うの?うーんまあいいけど。)

「悪いやあ。恩にきるで。ごめんホント頼むにぃ。」

  (悪いねえ。恩に着るよ。申し訳ないけどお願いします。)

「はいね。まかしょお。」

  (いいよ分かった。)

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わからあん

意味的なことではなくイントネーション命の遠州弁。「ら」を強く言う。

ニュアンス的に「どうかなー?」という無感情な茫洋な感じを表現する際に使われる。この言葉の前に「あー」とか「んー」とかいう言葉がつくことが多い。

「どうだかいやあ」が前につくと「わからん」・「わからんやあ」という風に「「わからあん」を使うことは少なくなることが多い。

例文

「あんたあでける?」

  (あんたならできるかねえ?)

「あー、わからあん いぜったこん ないもん。」

  (どうだろ。いじったことないからなあ。)

「でけるらあ。やってやあ。」

  (できるでしょ。やってみて。)

「わからんっつってるじゃん。知らんにいわしにやらせてどうかなってもを。」

  (自信ないって言ってるでしょ。私にやらせてどうにかなっちゃっても知らないよ。)

「ええよ。こわいたらちゃっと逃げりゃ済むこんだで。」

  (大丈夫壊したら直ぐ逃げれば済むことだから。)

「ふんだったらいぜくる前にとんずらこきまい。」

  (それだったらいじる前に退散しようよ。)

「悪さしちゃいんだで逃げんでもいいらあ。」

  (なにもまだ悪いことしてないだから逃げる必要ないでしょが。)

「そりゃそうだけえが、なんしょ いぜるなぁ やめまい。」

  (そりゃそうだけど。とにかくいじるのはやめようよ。)

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んじゃねえ・んじゃさあ

それじゃあね・それじゃあさあと言う意味。方言かどうかは疑わしいが一応記載。「そうじゃない」という場合も「んじゃねえ」とは言うがこれは発音が違う別物。

全国的にはおそらく子供が使う言葉であろうが、遠州はええ歳こいた衆らも当たり前に使っている。

「それじゃあ又明日ね」だと「んじゃまた明日ねえ。」

「それじゃあこうしようよ」だと「んじゃさあこうするかあ」・「んじゃねえこうせすかあ」

あまり話としては広がらないんで例文もなくこの辺で んじゃね。

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ん その1

「に」(格助詞)を訛らすと「ん」に遠州ではなる。場合がある。やたらくしゃ(なんでもかんでも)ということではない。どういう場合が「ん」に変わるかという法則を知ってればいいのだろうがアホがばれるのでそういう屁理屈は追わないのが私の主旨。

「やけに重い」は「やけん重い」

「がんこに重い」は「がんこんおんもい」

「京都に行こう」は「京都ん行かまい」

「そこにある金槌とって」は「そこんさあん金槌くりょ」

「に」だけでなく「は」(副助詞)も「ん」になることもある。

「今日は晴れるだろう」は「今日ん晴れるらあ」

「聞くは一時の恥」は「聞くん一時ばかの恥」

「の」(格助詞)も「ん」になる時がある。

「あの子の家に行く」は「あの子ん家ん行く」

「が」(格助詞)も「ん」になる時がある。

「台風がもうすぐやってくる」は「台風んはあちっとしたら来るに」

「今日が締め切り」は「今日ん締め切り」

まあ挙げたらキリがないのでこのへんで。因みに発音的にいうと「ん」というよりも「ぅん」と言うほうが近い。こんだけ色んな格助詞を「ん」にしてしまうので聞き取りは素人には難しいものがあるやもしれぬ。

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んじゃさあ

それじゃあねえ、とか言う意味。

「そんじゃさあ」や「ふんじゃさあ」が省略されたもの。まあ、方言かどうかは怪しい普段使いの言葉。

例文

「腹減ったのえ。」

  (お腹が減ったよね。)

「んじゃさあなんかとるけえ?」

  (それじゃあさあ。なんか出前とる?)

「なに食わす?」

  (何食べる?)

「ピザでもとらまい。ちゃっと来るで楽だでやぁ。」

  (ピザにでもしようか。直ぐ来るから便利だもんね。)

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んで

単純に「んで」だけなら、「そんで・ふんで」(それで)という意味になる。

「んでなによー」だと「それでなんだい」という意味になる。

それとは別で、「やらんで」(やらないで)・「せんで」(しないで)・「しんで」(しないで)といった使い方になると~ないでと言う意味になる。他の近い言い回しでは「やらんくて」・「せんくて」・「しんくて」などがあり、こちらは~なくてというのもある。

勿論ただ読みがたまたま同じなだけで「それで」と「~ないで」が同じ言葉から発生している訳ではない。

例文

「ただいまー。」

「あれえ、なんか買い行くっつって出てった割りにゃあ手ぶらじゃんか。どうしたよー。」

「うん買わすと思って行っただけどさあ。なんか知らんが値上がりしとって銭ん足らんもんで買わんで帰ってきた。」

「まあ金貯めるだの。貯金もしんで遊んどったら給料よりか高いもん買えんでの。」

「ふんだ。そんときゃローンで金借りるでええわ。」

「冗談で言っとるならええけど、本気(マジ)だったらぶっ殺す。」

「うそうそ冗談に決まってるじゃんか。そんな怒らんだっていいじゃん。」

「当たり前じゃん。返せもせんで借りて首ん回らんくなったら遅いだでねえ。んでどう工面せるだ?」

「なーも考えちゃいん。」

「買う気ないだらあ。」

「ふんだだことあらすかあ。買う気まんまんだけど知恵がないだけでえ。」

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わし

「自分」のこと。遠州では基本は「わし」である。よそいきやかっこつけたいお年頃は使わないが。男女問わず「わし」である。

ただ最近あまり使わなくなりつつはきているが基本は「わし」である。

かくいう自分も「わし」を使うにはまだ恥じらいを感じるお年頃なので実生活において「わし」と言うことは決してないのであるが。

「わい」は遠州弁では使わない。「おら」・「おいら」も殆ど聞かない。

当ブログにおいては基本形であるということで「わし」を多用することとしている。

例文

「やあ、ちいとわしんちよってきない。茶あぐらいは出すで。」

  (ねえちょっと私の家に寄ってきなよ。歓迎するからさあ。)

「いんやあ邪魔しちゃ悪いら。おっかさ気い遣わしちゃ悪いで帰るわあ。」

  (いやあお邪魔したら悪いだろう。奥さんに気を遣わせても申し訳ないから。)

「気いなんて使っちゃかんて。うちのもそんな気いつく奴じゃないだでええって。」

  (君が気を遣う必要なんかないって。うちのはそんな気が利く方じゃないから気にしないでいいよ。)

「ほうけえ。そいじゃちいとよらさしてもらわすかねえ。悪いのっ。」

  (そうかあ。それじゃあちょっと寄らして貰いますわ。すいません。)

注、「悪いのっ」は手間や迷惑をかけて申し訳ないという意味である。

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わるさ

漢字にすると悪さ。人に害を与えるとかいたずらという意味。って辞書に載ってるくらいなので遠州弁と言うことではない。ただ共通語よりももっと幅広い意味で頻繁に使われる言葉である。基本人に迷惑掛けること全般を指して使う。

「わるさせるじゃないにぃ。おとなしくしてなさい。」

  (動き回らないでじっとしてなさい。おとなしくしてなさい。)

「わるさして泣かいた。」

  (いじめて泣かした)

「わるさしてとんまさった。」

  (悪い事して捕まった。)

「若いときゃあわるさしまくって手におえんかったでの。」

  (若いときは手に負えない不良だったからね。)

勿論共通語的な

「性格の悪さ棚にあげといてよーゆーわー。」

という使い方もする。

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