1-2・遠州弁は行

はっつく

「ひっつく」・「くっつく」は辞書に載ってるけど「はっつく」はない。

「はっつく」は「張り付く」の変形だろうというのは私でも分かる。

「ひっつく」(引っ付く)ぴったりとくっつく・男女が親密になる

「くっつく」しっかりとついて離れない状態になる・男女が親密になる

と、辞書にはこういった風に書かれていた。繰り返すが「はっつく」は辞書に載っていない。

「ひっつく」を江戸の人間が「しっつく」と訛るということは想像できるが

「はっつく」は一部の地域で訛ったものだとも思えない。

「はっつく」って方言なのか?ちなみに遠州では「張り付く」より「はっつく」を多く使う。

むしろ「はっつく」と言わない地域があるのだろうかという疑問が生じる。ということであるが一応遠州でも使うよということで記載。

例文

「やあ、ガムんはっついちゃっててとれやあせん。」

  (あ~!ガムが張り付いちゃっていて取れないよ。)

「縁石かなんかにこすりつけりゃ落ちんけ?」

  (縁石とかに擦り付ければ落とせるんじゃないの?)

「シャツだもんでそりゃ無理だあ。」

  (シャツだからそれは無理なんだ。)

「どれえ、見してみい。・・・おおこりゃがんこだの。」

  (どら見せてみなよ。・・おおこれは相当だなあ。)

「だらあ。もうホントやっきりこいちゃう。」

  (そうだろ。もういやんなっちゃうよ。)

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はんぶっこ

「はんぶんこ」と言うのが共通語だとしたら。

遠州では「はんぶっこ」と言う言い方をする地域であるということ。広い地域で言われるので特に地域性がある訳ではないが。遠州で使っても通用するよということで。もちろん「はんぶんこ」も使う人がいるという混合地域でもある。

言葉の意味については説明しなくてもと思い省略。男女共用の言葉。

ネットで調べると幼児言葉(幼児に向けて発する言葉)と記載されてるところがあって、確かにと思うが、遠州人は未だ幼児性が抜けないのかええ歳した大人でも親しい同士なら普通に使っている。

「もちっこ」(持ち合う)・「はんぶっこ」・「かえっこ」(入れ替え)・「うそっこ」(うそ)などなど

「~っこ」という表現は遠州弁と相性がいい。

「半分にして」という言い方は他には「はんぶんつ」・「はんぶんっつ」という言い方がある。「半分づつ」という言い方の略形と推測される。こちらの言い方は幼児言葉ではないので親しくない人に対しても言っても差し障りがない。まあこれも広い地域で使われている言い方であろうが。

例文

「かえっこしまい。」

「やーだよ。」

「じゃはんぶっこしまい。」

「やなこってえ。」

「冷たいじゃん。」

「自分の使やあいいじゃん。」

「そっちん方がなんかいいだいね。」

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はれぼったい

一番判り易いのは「寝起きの顔」。要は「むくみがち」ということであろう。

「はれ」は勿論「腫れ」であり、「ぼったい」がなければ「腫れてる・むくんでる」ことになる。虫に刺されて腫れたような状態を「はれぼったい」というかというとこれは「腫れた」であって「はれぼったい」は使わないような気がする。打ち付けたところが「はれぼったい」とかでは使う。

この「ぼったい」という表現が味噌な訳であるが、これは果たして遠州弁か?

他の言い回しでは

野暮ったい・暗ぼったい・湿ぼったいとかがあり、野暮ったいは共通語で方言ではない。しかし暗ぼったい・湿ぼったいは全国的表現ではないらしく主にしぞーか県の方言として紹介されているところが多い。まあ野暮ったいは野暮+たいであってこれらとは別の種であろうが。

ちなみにしぞーか県全体に範囲を広げてみると

おおぼったい(うっとおしい)・いらひじぼったい(物欲しそうな)

全国に広げると

厚ぼったい(厚め気味)・古ぼったい(古臭そう)・しょぼったい(しょぼくれ気味)・眠ぼったい(眠いのでだるい)・熱ぼったい(なんとなく熱がある)・安ぼったい(安物っぽい)

意外なとこでは「口はばったい」を「口はぼったい」という地域もあるそうな。

(以上はネットで検索して発見したので正しいかどうかは定かではない)

つまるところこれは辞書には載っていないが全国的に広がっている表現ではないかということ。

もっとも「タメ」が遠州発信で全国的に認知されたようにこの「ぼったい」表現も同様に全国に広がったものということであれば話しは別だが。

でもまあ多くのところで遠州弁と紹介されているので項目としては遠州弁扱いの中に入れるけど。気持ちとしては「~っぽい・~気味」という意味の使い方に関しては全国的なもので遠州弁ではないと否定する記事ではある。

あくまで使用頻度が高い地域だということであろうか。

ただし駿河弁での使い方に関しては意味が異なるので、方言としての意味使いをする「ぼったい」についてはこれは駿河の方言であろうかと推察するのであるがどうだろか。

例文

「なあんか体んだるいだいね。風邪かなあ。」

  (なんとなく体がだるいんだよね。風邪ひいたかなあ。)

「気の弛みすぎだって。」

「ひどいことゆうやあ。一生懸命やってるっつうに。」

  (随分じゃないか。一生懸命やってるっていうのに。)

「顔腫れぼったいにい。会議寝えってただらあ。寝起きでだるいだけだらあ。」

  (顔がむくんでるぞ。会議で寝てたんだろう。寝起きでだるいだけだろうに。)

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はあはあ

「もうもう」と言ってる訳ではない。「ぜえぜえはあはあ」の「はあはあ」である。

言葉そのものはごく普通な共通語であるが、共通語では「息が上がる」を「息がぜえぜえする」というのを遠州では「息んはあはあする」と言うことが多いということである。イントネーションは平坦。男女共用の表現。

遠州で「ぜえぜえ」を使うと「病気か?」と心配されるくらい病的というニュアンスに解釈される。

例文1

「マラソンは息んはあはあするでいやだやあ。」

「なにょうこくだあ。わしなんか階段上がるだけで息はあはあだにい。」

「運動しんもんで。」

例文2

「マラソンは息んはあはあするでいやだやあ。」

「なにょうこくだあ。わしなんか階段上がるだけで息ぜえぜえだにい。」

「どっか悪いだらあ。医者いきない。」

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ばれる

辞書を引くと、「ばれる」発覚する・掛かった針から魚が逃げる・気づかれるとかいう意味となっている。

遠州弁というかうちの集落ではそれ以外にも束にしておいたものが「解ける(ほどける)」とかバラバラになるような事を指す。ま、つまり「ばらける」という意味で使われることがあるということ。

「ばらす」という表現が「壊す・外す」に対しての「ばれる」は「壊れる・外れる」ということで、例えば「紐をばらす」(紐をほどく)・「紐がばれる」(紐が外れる)みたいな。

別に方言でもなんでもないだろうと思っていたけど確信はないがどうもそうじゃないみたいな気がしてきたので記載。

イントネーションは共通語での意味使いの場合「れる」と「ば」強くなるのだが

遠州弁的使い方の場合には「ばる」と「れ」を強く言う。使いどころについては「ばらける」を「ばれる」に言い換えれば済むのであるが。

例文

「あれやあ。散らばらんよう紐結んで束にしてただに、ばれただかしらんがくっちゃんくっちゃんじゃん。」

  (なんだよ。散らからないように紐で結んで束にしておいたのに、外れたのかしらないが散らかってるじゃないか。)

「ばれたじゃなくてばらいただらあ。シゲさの奴がちびっと使うっつって持ってったの見たでシゲさ ばらいてっただらあ。」

  (外れたんじゃなくて外したんだろ。シゲが少し使うからって持っていったの見たからばらしたとしたらシゲだろうな。)

「あんの野郎元戻すっちゅう言葉知らんだか?」

  (あいつは元に戻すという言葉を知らないのか。)

「みたいだの。」

  (みたいだね。)

「もしそうだったら後で説経だあ。」

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ばんらばら

まあ「バラバラ」ということで特に方言とうことではないのであるが、遠州弁における使い方として、こう表現することで「もう嫌」的な呆れてる感が加味される効能を有することになる。男女共用表現。

「ばらんばらん」という表現もあるがこちらのニュアンスは第三者的とか見放したみたいな突き放し感が増す。

より冷たさを追加するには「ばらっばら」を使うことが多い。この場合怒りの感情が多少こもり気味に聞こえることがある。

ただしいずれも遠州弁におけるニュアンスの説明であり共通語のニュアンスを説明してる訳ではないのでお間違いなきよう。

例文

「運動会どうだったよを。」

  (運動会どうだった?活躍できた?)

「全然。」

「なに出たよを。」

  (なにに出場したの?)

「ムカデ競争とか。」

「勝てなんだだ。」

  (勝てなかったんだ。)

「だってさ~あ、みんなばんらばらで前 進みゃせんだもん。」

  (だって皆バラバラで前に進まないんだもの。)

「普段から仲良くしとかんもんでばらんばらんなるだにい。」

  (普段から仲良くしておかないからそうなるんでしょうに。)

「元からばらっばらだもん。こんな時に備えて仲良くしまいなんて無理に決まってるじゃん。」

  (最初っから合わないんだからこういう時に備えて仲良くしとこうなんて無理な話しなの。)

「大人んなりゃあ好き嫌いでつきあいとか選べやせんくなるだでちったあ訓練とかしといた方がいいにい。」

  (大人になったら好き嫌いで付き合いとかは選べなくなるんだから今のうちから馴れるようにしといた方がいいと思うよ。)

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馬鹿かあおんしゃあ

お前は馬鹿か?とあきれてる様。怒っているというニュアンスよりついていけないと云うニュアンスの方が強い。

怒る・注意するとかいう場合は「ばかっつら」が普段よく使われる。

例文

A「なんかインパクトん足らんなや。」

B「サードインパクトけえ。」

A「馬鹿かあおんしゃあ。人類補完計画なんてされた日にゃ飯の食い上げじゃんか。」

  (おいおいなに言ってんだよ。・・訳略・・)

B「なんかちょっとあってん気いするけえが、その前にどっちにせよ生きちゃいんと思うけど。」

  (なんか辻褄が合わないような気がするけど。その前にどのみち生きてはいないと思うけどね。)

A「馬鹿こいてんで真面目に考えろやあ。」

  (おちょくってないで真面目に考えろよな。)

C「ばかっつら。おめえら二人とも真面目には見えんぞ。会議やるきあんだか。」

  (馬鹿野郎。お前ら二人とも真面目にやってる風には見えないぞ。会議ヤル気あるのか?)

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はしくりまわる

「走り回る」という意味。男女兼用の言葉。遠州弁特有かどうかは定かではない。

ちなみに「はしくりまわす」という表現はなく走らせると言いたい場合には「はしくりまわさす」という言い方になる

人に向けて言うと迷惑・うっとおしいというニュアンスがこもることが多く、自分の事を言うと無駄骨・結果無意味とかいうニュアンスを含むことが多い。

「はしくりまわってこれかよ。」ってな具合で。

こういう表現の一例は「いじくりまわす」・「つれくれまわす」とかがあり結構多様でありニュアンスもそれぞれ異なり奥が深い表現である。

例文

「やあ。家ん中はしくりまわってんで外行って遊んできい。」

  (もう。家の中ではしゃいでないで外に出て遊んできなよ。)

「やあだよ。暑くて死ぬわ。」

  (厭だよ。暑くて死んじゃう。)

「ホント最近の子はやごいだかしらんがエアコンないとかんだなあやあ。」

  (本当に最近の子供は軟弱というかエアコンがないと暮らしていけないんだなあ。)

「ふんなこんゆったって外出て倒れたらどうしてくれるよを。」

  (そんなこと言ったって外に出て倒れたらどうしてくれるよ。)

「死にゃせんでええよっつえれんのがありそうで怖いなあやあ。」

  (死ぬようなことはないよって言えれないことが本当にありえそうで怖いよな。)

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ばかばっか その2

「馬鹿ばかりで嫌んなっちゃう」という意味の表現。ニュアンス重視で訳せば「使えない奴ばかり」・烏合の衆だ」という訳し方もできる。男女兼用の言葉である。

遠州全域かどうかは定かではないがうちらの集落とか職場では非常によく飛び交う表現である。一例として

「馬鹿ばっかでホントしょんない」(使えない奴ばかりでもうどうしようもない)

という表現は日常茶飯事に使われる。

基本自分以外の連中の無能さを嘆くというものであり、取られようによってはお前何様だよという非難を浴びかねない面があるので知らない人やあまり親しくない人を含めてこう発言するとろくな結果にならない。あくまで身内同士の愚痴として使われる表現であろう。陰口としても使うし直接相手に向けて言う使い方もする。

「ばっか」という表現が味噌であるが、以前の記事では「~ばかり」という訳だけであったが、「ちゃんとできない」という訳し方もあながち遠くないと思って追記とした。

例文

「なんでこれっぱかのこん時間で終われんだあ。」

  (どうしてこれくらいの事が時間内に終わらせられないんだ?)

「なにがあ。マニュアルの想定時間通りじゃんかあ。」

  (なに言うんだ。マニュアルに書いてある時間通りじゃないか。)

「おめえら何年仕事してるだあ。マニュアルなんか初心者のもんだろがあ。」

  (お前ら何年この仕事してるんだ?マニュアルなんざ初心者用だろうが。)

「ふんなことゆったってそれでええことなってるだで。」

  (そんな事言ったってそれでいいことになってるんだから。)

「とろくっさい。ホント馬鹿ばっかでしょんない。」

  (進歩しない奴らだ。もう本当に使えないなあお前らは。)

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ばっかとばかは違う

「ばっか」はばかり・ばかし言う意味。「ばっかじゃないの」という馬鹿と言う意味とは異なる。しかしながら近い言葉で「ばか」と言う言い方もあるにはある。ただしこちらは「~くらい」というニュアンスになるので「くらい」と「ばかり」の違いはある。「ちっとばか」(少しくらい・ちょっとは)、「ちっとばっか」(少しばかり・それっぽっちというように。おんなじじゃねえかといわれればそれまでだが。

「ばか」(BAKA)の変形で「ぱか」(PAKA)というのがあり意味は同じだが言い易いように変形したと想像される。「これくらい」を「これっぱか」というように。ちなみに「これっぱっか」という言い方はあまりしないが意味としては「これっぽっち」となる。なるにはなるが普段は「これっぱか」で通用するし共通語でも「こればかし」なんて言わないので解釈としては苦しい。ちなみのちなみで「こればか」(KORE BAKA)という言い方はない。ちなみのちなみのちなみで、「こればっか」(こればかり)と言う表現はある。

例文1

「そんなねえちっとばかのこんでひゃあひゃあゆう奴は嫌われるにい。」

  (そんなねえ少しのことで大袈裟に言うような人は嫌われるよ。)

「なんか言やあ、いつも、そればっか。はあ聞き飽きたわあ。」

  (何か喋るといつもそう言う。もう聞き飽きたよ。)

「いくらゆってもきかんでゆうたってしょんないだけどね。」

  (何度言っても聞かないんだから言うだけ無駄だけどね。)

「なんでうちらばっかにそんな厭味ゆうよを。」

  (どうしてうちらばかりにそんな厭味を言うの?)

「厭味じゃあらすかあ。本音だにい。」

  (厭味じゃないよ本音だよ。)

「余計悪いじゃん。」

例文2

「よし。これであたあ、やるばっかしでえ。」

  (よっしゃ、これで後はやるだけだ。)

「あんたあなによー。これっぱかしか用意しとらんの?」

  (あんた何?これっぽっちしか用意してないの?)

「なにがぁ。全部で三人だらあ。これで十分じゃん。」

  (いいだろ。全部で三人だろ?これで十分じゃないか。)

「なにゆってるよを。三組!三人じゃないにい。」

  (なに言ってるの三組!3人じゃないよ。)

「はははははは・・・。」

「なに笑ってるよを。」

「はあ嗤うしかありもしん。」

  (嗤うしかないだろもう。)

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