1-2・遠州弁な行

なんとなし

「なんとなく」という意味だが「く」が「し」に訛ったというよりも、「なにとはなしに」という言い回しがはしょられて訛ったと考える方が合点がいくのは気のせいか。

なのでかは定かではないが、「なんとなしに」と「に」をつける言い方をすることも多い。

男女共用で「なんとなく」と「なんとなし」の明確な使い分けとかはない。

例文

「貰ってきたにい。こっちいあんたんね。」

「なんかさあ、わしんのとあんたんのと違やへん?」

「んなこたぁないよを。おんなしだって。どこ見てるよを。」

「いやあ なんか なんとなし そう思うだよを。」

「どこがよを別におかしかないらあ。一緒じゃん。」

「だってさぁっあ。あっ分かった。あんただまくらかいてホント二つんとこ三つ貰ってきただらあ。」

「ちっ、ばれたか。」

「おんなしだっつっただでいいじゃんね。かえっこしまい。」

「随分じゃん。」

「どっちがよを。」

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なんでえや

「なんか用?」・「何の用だ?」とか言っている。

パターンとしては人づてに用があることを聞きつけて言ってた本人にそれを問うような状況で使われることが多い。

「ねんでえやあ」とするとちょっと何言い出すのか心配してる勢いになる。

直に自分に用があるのかと判断して問うような場合には「なんでえ」と言う事が多い。

例文

「わしに用ってなんでえや。」

  (私に用があるって聞いたけどなんの用?)

「いやあ大層なこんじゃないだけどさあ。わりいだけどけったー貸してくれんかねえ。」

  (うん大した事じゃないんだけどさあ。悪いんだけど自転車貸してもらえないかなあ。)

「そりゃええけどわし通勤で使わすもんで長くは貸せんにい。」

  (別に構わないけど通勤で使うもんだから長い間は貸せれないけど。)

「ちょっと行って帰ってくるだけだでずうっとじゃないでえ。」

「ほんならええよ。貸しちゃるよ。」

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なんでよを

「どうしてそうなるのよ」と言っている。男女共用の表現だが女性が男をなにかと問い詰める時とかによく使われる傾向があるので女性言葉としてもいいのかもしれない。

ちなみに男言葉なら「なんでだあ」とかがあるので「なんでよを」を使わなくとも男性は困ることはない。

女性が使うと詰問で男性が使うと伺い(下手に出る)というニュアンスになることが多い。

例文

「なんでよを。なんでそうなるよを。あんたこないだゆったよね。」

  (どうして?どうしてそうなるの?あなたこの間言ったよね。)

「なにおお。」

  (なにをだい?)

「はあ忘れたたあいわしゃへんでねえ。」

  (もう忘れたとは言わせないからね。)

「知いらんやあ。なにゆったっつうだあ。」

  (覚えがないなあ。何を言ったっていうんだ?)

「はあ金輪際煙草は吸わんてえ。」

  (もう金輪際煙草は吸わないって。)

「ありゃあれでえ。風邪ん時はえらいで体しんどい時は吸わんっつっただあ。」

  (あれは、風邪ひいた時に辛かったんで体調悪い時には吸わないようにするって言ったの。)

「ああゆやあこおゆうだねえ。」

  (ああ言えばこう言うんだねえ。)

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なんでかやあ

「どうしてだろうねえ」と言っている。どういう訳かこうなってしまうという理屈が判らず混迷してる様を伝える表現。基本男言葉で女性の場合「なんでかねえ」を使うことの方が多いのではないか。

切迫感は薄い。

例文

「みんなあっちの店行くねえ。」

「確かに。なんでかやあ。うちもなんかしんと潰れるちゃうねえ。」

「呑気な事ゆってる場合じゃないにい。どうするよを。」

「とりあえず、あっちの定休日にこっち店開けまい。」

「他にないだけえ。」

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なんでだやあ

「何故だ」・「どうしてなんだ」などと言っている。愕然としている訳ではないが、おっかしいなあそんな筈ないんだけどと思案に暮れる様を伝えている表現。

一見開き直ってる風に聞こえるやもしれぬが、そんなことはなく単純に戸惑っていることが多い。男性の表現。女性だと「なんでよを」・「どうしてよを」とかが多く使われる。

「なんでだいやあ」となると「どうしてかなあ」と小首を傾げる程度の状況で用いられるといった差別化が図られることが多い

例文

「おっかしいなやあ。だんれもきやせんじゃん。」

「なんでだやあ。ちゃんと連絡しただら?」

「したよをちゃんとを。」

「どうゆう風にい。」

「え~?分かりいいように昔の名店ビル前んとこに集合ねって。」

「馬鹿っつら。最近越して来た衆ばっかだにい。そんなんで分かる人どこにいるよを。」

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なにい

「なんだよ」と言っている。「なにやあ」の記事でも書いたが基本女性言葉と思われるが男も使うにおいて違和感はないので男女共用な表現であろう。

なんとはなしに「この忙しいのに」といううっとおしさが隠されているというか籠められてると言うかそんな感じがする。

アクセント位置は「に」と「な」になる二種類がある。女性は「な」で男は「に」とすることが多いのは気のせいか。

例文

「ほぉいぃ、ちょっとを。」

「なにい、今それどころじゃないで後にしてやあ。」

「後でいいならそうせるけどいちおおゆっとくね。」

「なによを。」

「チャック開いてるにい。」

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なにやあ

「なんだあ?」と言っている。関西系の表現なんだろうか。遠州でも使うということで記載。

ニュアンス的にはあまり適切な喩えではないが、うんこ座りしてるあんちゃんに声を掛けて返ってくる返事の「はあ?」みたいな。それのツッパリ威嚇を抜いた感じ。って分かりにくいか。

知らない人に対して使うとそんなイメージととられ、普通は知り合いに向けて発するものであろう。「ああ?なんだって?」とか「なに呆けた事言ってんだ」みたいな。ほぼ男言葉で女性は使わないであろう。女性だと「なにい」であろうか。

「なんじゃあ」とかはあまり使わない。

例文

「お~いちょっといい?」

「なにやあ。今手え離せんで後にしてくりょを。」

「ちょっといいで聞いてくれやあ。今度新しく入った○○君ね。」

「挨拶ぁ後後。後でゆっくりせるでえ。」

「はい宜しくお願いします。」

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なんでえ?

語尾の「え」がぴょこんと跳ねる勢いで言うのは遠州弁らしい。

らしいと言うのは某芸能人さんがテレビの番組の中で「なんでえ?」を発したところ方言じゃないの?ということで複数のブログとかで盛り上がって?いたのを読んでふ~んそうなのかあと。実際その番組とかは見ていないので私の想う説明の「なんでえ?」と同じものなのかは定かではないのだが多分このことだろうと思って記載。

イントネーションの問題であって意味が方言チックということではないけど多少はニュアンスが異なる。

平坦であるならばその意味は「どうした?」とかいうなんだなんだみたいなことになるが。

イントネーションを細かく言えば「なん<で<えー」と徐々に上がっていく。

この語尾が上がる場合での意味は「どうして?へんだなあ」・「なんでそうなるの?」とかいうニュアンスになる。自分が思ってたことと違うような場合で発せられることが多い。男女共用の言葉。

共通語で近いのは「ウソっ!」であろうか。

例文

「あれ?だんれもいんじゃん。」

「わし居るじゃん失礼だねえあんた。」

「なんでえ?今日みんなしてあれやるっつってんかったっけ。」

「なに寝言こいてるよを。それきんのうの話しじゃん。」

「ほんとにけえ。やっばー!そんじゃ寝過ごしただあ。」

「あんたいつまで寝えってたよを。ひょんきんだやあ。」

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なにがあ(憤慨調)

「が」の発音が鼻濁音であるならば「なにが?」という共通語と同じ「どうかしたの?」という意味合い及び「すっ呆け」の使い道であるが。

鼻濁音ではなくきっちり「が」と発音したならばその場合の意味は

「なんだよ文句あんのか?」又は「ごちゃごちゃ五月蝿い」というニュアンスになる。アクセントは当然「が」を強く言う。

つまり怒ってるモードに突入してるというアピールであり受け手は警戒を怠ってはならないことになる。

また。この表現を逆手にとって「なんちゃってむかついてるぞ」パターンとして使うこともある。つまり「嬉しかない」とか言いながら内心は「嬉しい」みたいな。照れ隠しとか図星な時とか。

まあこれらの言い方が遠州独特かどうかは定かではないが。鼻濁音のあるなしをしょっちゅう使い分けてることは確かである。

例文「が」のはっきしバージョン

「そこんさあ いれこになっちゃいんかあ?だで閉まらんだらあ。」

  (そこあべこべになってないか?だから閉まらないんだろう。)

「なにがあ。わしん やりよい ように やってるだで いいじゃん別にい。」

  (なんだよ文句あんのか。俺のやり易いようにやってるんだから構うな。)

「そんなむきんならんだっていいじゃん。気になったもんでゆっただけだで。」

  (そんなむきにならなくたっていいだろ。気になったから言ったまでだから。)

「いらんこんだで口はさむなやあ。」

  (余計なお世話なんだから口をはさむなよ。)

「おおそうけ。そんじゃ なんかあってもわし知らんでねえ。」

  (ああそうかい。それじゃあなんかあっても俺は知らないからね。)

例文「が」が鼻濁音のバージョン

「そこんさあ いれこになっちゃいんかあ?だで閉まらんだらあ。」

「なにがあ?わしん やりよい ように やってるだで いいじゃん別にい。」

  (なんか変?自分のやり易いようにやってるだけで別に構わないでしょ。)

「なにがあじゃねえよ。そんな自分勝手なやりようしとるとヘボこくにい。」

  (なんですかじゃないよ。そんな自分流でやってるとミスするぞ。)

例文 本心隠しの場合

「え~なによを100点けえ。いいなあやあ。」

「なにがあ。たまたまだよ。」

「陰でがんこ勉強してるだらあ。」

「人のことゆえもしん あんただって悪かないじゃん。」

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にい

「そんな温めなくてもいいよ」を遠州弁に直すと

「あんたさあそんなぬくとめんでいいにい」(注、にい にアクセント)

この場合の「にい」の言い方でニュアンスが微妙に異なる。「いいにい」を例にすると

1・「いい」よりも「に」と「い」を両方強く言う場合は強制力が強くなる。つまり断定か命令形に近くなる。

2・「いい」を強く言って「にい」を尻すぼみ的に言う場合は助言した感が増す。こうした方がいいよという感じ。

これに「だ」を足して「だにい」にした方が判り易いか。

1の場合「いいだにい」は「いいんだから」と置き換え

2の「いいだにい」は「いいのに」と置き換えられる

このように書き文字だけだとどちらか判断がつかないことが多い。

いつか音声付で説明するよう進化したいものだ。

例文

「夫婦喧嘩はガチンコでやった方がいいだにい。

  (夫婦喧嘩はガチンコでやった方がいいんだよ。){1のにい}

  (夫婦喧嘩はガチンコでやった方がいいのに。){2のにい}

「他人事だと思ってえ。ぼこぼこにされたらどうしてくれるよを。」

  (他人事だと思って随分な。徹底的に打ちのめされたらどうしてくれるんだ?)

「ぼんろぼろんなったら うち きない。ほとぼり醒めるまで泊めたるにい。」

  (ぼろぼろになったら家に来な。落ち着くまで泊めてやるよ。){1のにい}

  (ぼろぼろになったら家に来なよ。落ち着くまで泊めてあげてもいいんだから。){2のにい}

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