1-2・遠州弁た行

だよ

「明日ちゃっと行って買うだよ。」という「だよ」の使い方は遠州弁か?違うよなあ。「買うんだよ」・「買うのだよ」の「ん」とか「の」抜きというだけの話しだよなあ。

でも「なあんか今日ヤル気せんだよ。」こう言うと訛ってるって言われるのか?微々たるもんだけど言われるよなあ。

だったら「母さんが夜なべをして・・・云々」の一節で

「せっせと編んだだよ」の「だよ」はなんだ?という話しになるではないかしらん。そりゃあ田舎の母さんだから方言言ってるってのはありうる話しであるが訳さなくても通じるもんじゃないなのか。それくらい広い範囲で使われている言い回しじゃないなのかと。まあ「だよ」がということではなくて「だだよ」というのが方言なんだろうけど。

でもまあ「だよ」と「だわ」は遠州では非常によく使われる表現で、それに「だあ」・「だよお」・「だわあ」も含めると、大袈裟ではあるが遠州弁の変遷で「づら・づらに」→「だら・だに」と来て次が「らあ・にい」と続き、その後くらいに「だあ・だよ・だわ」とかへと替わりかねない勢いの表現なのかもである。

まあ随分オーバーに言い過ぎましたですけど、頻度は間違いなく多いのでもう遠州弁というか癖と見なして記載だわ。

「だよ」を「づら」に替えても意味に変化なく成立する。「だわ」に置き換えてもニュアンスは微妙に異なってくるが成立はする。

共通語に直すとなにに相当するのだろ。「のさ」・「んだ」(買うんだ・しないんだ)とかになるのかな。色んなニュアンスに化けるので難しいところではあるだよ。

例文

「こっちんさあにこのパーツいごかいてみただよ。」

  (こっちにこのパーツを移動してみたんだ。)

「んで?」

  (それで?)

「そしたらなんでかしらんがいごかんくなっただよ。」

  (そうしたらどういう訳なのか動かなくなっちゃったのさ。)

「元戻すしかないの。」

  (元に戻すしかないねそれは。)

「でえ。元がどうなってただか忘れちゃっただよ。」

  (だけど戻そうにも元がどうなってたのか分からなくなっってしまった。)

「だで?」

  (だから?)

「つまり壊れただよ。」

  (つまり壊れたんだなこれが。)

「壊れたじゃないらあ。そりゃつんぶしたっつうだに普通わあ。」

  (壊れたんじゃないだろ潰しただろうそれは。)

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だかいねえ

「~だかいねえ」訳すと「~かしらん」・「~なのかなあ」。

基本女性言葉寄りの男女共用言葉。男だと「だかやあ」を使う方が少なからず多い目か。

「ねえ」とか「やあ」を外して「だか」だけだと「~なのか?」と語調が問い詰める感じが強くなる。

「だ」を外して「かいねえ」とすると「~とかなのかねえ」という訳が近いか。

例文

「これでやれってこんだかいねえ。」

  (これでやれっていう事なのかねえ。)

「さあどうだかいねえ。」

  (さあどうだろうねえ。)

「ちったあこっちにも気い遣ってくれる気いないだかいねえ。」

  (少しはこっちにも気遣ってくれる気とかないのかなあ。)

「ないんじゃない?」

「やりおせんくてもいいだかいやあ。」

  (出来なくてもいいのかなあ。)

「そりゃかんらあ。」

  (それはだめでしょう。)

「だらあ?じゃどうせすでえ。」

  (そうだろ。じゃあどうすりゃいいんだ?)

「ねえ。どうせりゃええだかいねえ。」

  (そうだよね。どうしたらいいのかねえ。)

「ホントこれでやっれてこんかいねえ。」

  (本当にこれでやれってことかなあ。)

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だもんで

頭に持ってくれば「だから・なので」という意味合いになる。

「だもんでさっきいからそをゆってるじゃん。」

  (だからさっきからそういってるでしょ。)

そうでない場合

「傘持ちなしあわくって出てくだもんでそうなるだよ。」

  (傘も持たないで慌てて出かけるもんだからそうなるんだよ。)

この文で「だもんで」を使わないと

「傘持ちなしあわくって出てくでそうなるだよ。」

  (傘も持たないで慌てて出かけるからそうなるんだよ。)

「だもんで」を使うと「だから言ったじゃないか」とか「当然そうなるだろう」みたいな説経じみたニュアンスが強めにになることが多い。無意識で「だもんで」を使うとむっとされることがあるので注意が必要ではある。

その逆に言葉の最後に持ってくると

「傘持ちなしあわくって出てくとそうなるだもんでえ。」

  (傘を持たないで慌てて出てくからそうなるんだから。)

言い切りではなくて「~なんだから」・「~だと思うけども」という感じの語気を弱める効果がある。次に続く言葉があるのかなと思われたりするキレの悪さがあるが、これで終い(言い終わった)ということが多く口に物を挟んだような言い方とはなる弱点はある。気の短い人だと「だでなんだあ?」(だからなんだよ)と言われたりしかねないくらい柔らかい言い方になる。

「だもんで」の省略形であろう「だで」を使うとそういった歯切れの悪さが解消される効能があり、「だで」を使う人が増えつつあるような気がする。

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だら

「だら」を共通語に訳すとき「だよね」とすれば大抵ははまる。成程なと思える。確認・問いかけ・同意を求めるという意味使いで用いられるということは確かにある。

それに「だよな」と付け加えればもっとうなずく事はできる。なにせ地位や年齢・性別に関わらず誰もが放つ表現なので訳す場合は上下関係とかも考慮しないとみんなタメのつもりで発してる訳ではないので。

しかしながらなんでもかんでも「だよね・だよな」という訳で通用するものではない。例えば

「まあちっと左い寄せた方んみばぁよくなるだら。」

訳すと「もう少し左に寄せた方が見た目がよくなるんじゃないのか。」

となり「もう少し左に寄せた方が見た目がよくなるんだよね。」というニュアンスにはならない。そう言いたい場合は

「まあちっと左い寄せりゃあその方みばぁよくなるだいね。」という感じにした方がスムーズになる。

それに、「だら」の語尾を上げて疑問符形にするとその訳は「もう少し左に見た目がよくなるんだろ?(だからそうしな)。」となる。問いかけではなく命令・指示といった表現になる。

変な話し、「だろう」の旧仮名遣い「だらう」と遠州弁の「だら」は親戚か?と思えないでもない感じがしないでもない。

「だろうか」=「だらか」・「だろうな」=「だらな」

勿論奇遇であってそうだと言うのは変極まりないことであるが。

「だら」とはこうであるとかいう結論を出せないけれど、まあいづれにしても「だら」をなんでもかんでも「だよね」と訳すわけにはいかないほど幅広いニュアンスの意味を持っている言葉であることは確かであろう。

例文

「おめえも飲むだら。」

  (お前も飲むよね。)

「わし遠慮しとくわ。今日飲んで帰るとおっかさにどんじかられるで。」

  (自分遠慮しとく。今日飲んで帰ると女房に怒られるんで。)

「なんでえ。おっかさ子供産んで在所帰ってるだら。」

  (なんでだよ。奥さん出産で実家に戻ってるんだろ。)

「だもんでじゃん。」

  (だからだろ。)

「意味分からん。」

  (意味が分からん。)

「わし独りじゃ飯とか洗濯とかできんもんでおっかさの在所にわしも寄らして貰ってるだよを。だもんで酔っていかすとみこ悪くするもんで飲んじゃかんっつわれてるだよ。」

  (自分料理とか洗濯できないものだから女房の実家に自分もくっついて行ってるんだ。だから酔って帰ったりするとご両親の印象悪くなるから飲むなって釘刺されてるんだ。)

「なんかおめえの未来像が俺にもめえるやあ。」

  (なんとなくお前の未来像が俺にも見えてくるなあ。)

「マスオさんってか。」

「だら?」

  (だよねえ。)

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だまらかす

「黙らせる」という意味。「黙らす」よりも強制感が強い。

例文

「やあ。あいつひゃあひゃあ五月蝿いでだまらかしょ。」

  (おいあいつごちゃごちゃ五月蝿いから行って黙らして来いよ。)

「どうやってえ。やり方しらんにい。」

  (どうやればいいのさ。手段が分からん。)

「いいだよ。思いきっさ けつ けっからかしゃあ黙るで。」

  (構うことなしに思いっきりお尻蹴っ飛ばしてくれば黙る。)

「わしじゃよをでけんであんた自分でやってきてやあ。」

  (おれにはとても無理だ。自分でやってきなさいよ。)

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たるい

「たるい」。「かったるい」とかと同じな「たるい」。広い地域で使われる方言的俗語か。地域によってニュアンスのばらつきがあるようで、遠州においては心情(人)を表わす場合は気合いが入らないとかいう意味で、状況(物)を表わす場合には緩い・ぶかぶかとかいう意味で使われることが多い。「弛む」(たるむ)の変化したものか?と想像できるが定かではない。

「たるい」と「かったるい」ではどちらがより「たるく」感じられるか。個人的には「かったるい」は(軽くたるい)と聞こえるので「たるい」の方がたるい感が強く感じられる。強調する場合は遠州では当然のごとく「ど・馬鹿」のいづれかを付ける。

「だるい」とどう違うのか。使いどころはどちらでも同じな場合もあるのだが、「けだるい」・「かいだるい」だと体が重く感じられるくらいの疲労感を感じるのだが、「たるい」だとめんどくさいとかやる気がないみたいな倦怠感を感じる。

つまり要は乗り気でない様を訴えている訳だが、「だるい」は肉体面の理由で「たるい」は精神的な理由で意欲に欠けるという使い分けをしているみたいだ。

「たるい」の使い方は行うことへの「愚痴」であって出来ない・しない「理由」や「いい訳」ではない。「だるい」はその点理由やいい訳になりうる。

もうひとつ近い言葉で「なるい」というのがあるが、これは「生温い」(なまぬるい)という意味に近く意欲はあるが全力を尽くすに足らないような場合で使われることが多い。

対しての「たるい」は意欲に欠けて全力を尽くせないような場合にということであろう。

「たりい」という言い方もあり、意味は同じでこちらは男言葉で「たるい」は男女共用の言葉である。

例文

「さあ今日も元気にやらまいか。」

  (さあ今日も元気にやろうぜ。)

「なんかなあ。ど暑くて仕事やるにたりいだいやあ。」

  (なんだかなあ。滅茶苦茶暑くて仕事するのがかったるいよぉ。)

「心配しんでもそんなじゃ絶対ミスこいて冷や汗ん止まらんくてさぶくなるにい。」

  (大丈夫だよそんな様子じゃ絶対ミスして冷や汗が止まらなくなって涼しくなるからさあ。)

「冷たいじゃん。」

「こんだけでも冷えたか?」

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たあ

「とは」の変化したもの。ただし「いっしょくたあ」が「一色とは」という訳ではないようにすべて「たあ」=「とは」であるとは限らない。

「ゆわんかったたあいわしゃへんでねえ」(言わなかったとはいわせないからね)

といった使い方をする。すべてがこのように変化する訳ではなく

「とはいっても」を「たあゆっても」とは言わない。

例文

早い者勝ちの喧騒に包まれた限定品売り場にて

「あんたねえちったあ気い利かすなりして遠慮しない。いやったい。ないと困るもんじゃないだら?」

  (あのねえ、ちょっとは気を利かすとかして遠慮しなよ。えげつないんだから。ないと困るものじゃないんでしょ?)

「あんた欲しくないもんでそんなこんゆうだけど、んなことゆったって限定だもんで遠慮なんかしてたら手に入らんかもしれんじゃん。」

  (あなたは欲しくないからそんな事いえるんだろうけど、そんなこと言っても限定なんだから遠慮なんかしてたら手に入らないかもしれないじゃないの。)

「ほんとに必要なもんはなくなりゃせんよ。数限るっちゅうこたあなくてもとんじゃかないもんだらあ。」

  (本当に必要な物はなくなったりなんかしないよ。数を限るってことはなくても不自由しない物なんでしょうに。)

「しょんないじゃん。欲しいだでえ。」

  (しょうがないでしょ欲しいんだから。)

「まあせいぜい踊んない。」

  (まあせいぜい踊らされてきなよ。)

「そんなあきれかあらんでもいいじゃん。」

  (そんな呆れなくてもいいじゃないの。)

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たのむにい

「頼んだよ」・「頼むよお願いだから」とかいう意味使い。

命令口調ではなく懇願口調になることが多い。ただし下手に出ているとはいえ全幅の信頼を抱いてる訳ではない場合もある。

「ちゃんとやってよ。ほんとたのむにい」だと「ほんとに大丈夫かよちゃんとやれるのか?」という訳になる。

「あたぁまかいたでたのむにい」だと「後は任せるからお願いね」という訳になる。

強気で物を頼むような場合は「たのむわあ」・「たのむでねえ」・「たのんでるだで」とかになることが多い。

「おーいたのむにい」となると「おーい勘弁してくれよちゃんとやって」・「頼むから真面目にやって」とかいう意味になる。

「ね~えたのむう」だと「お願いだから」という訳が分かりがいいか。

このように遠州では「お願い」=「頼む」であり、「お願い」という言い回しよりも「頼む」という言い方を多く使う種族ともいえる。

例文

「はあ忘れた。」

  (もう忘れたよ。)

「ええ~でけんだ?」

  (ええ~?出来ないの?)

「がんこ昔にやったっきりだもんででけるか自信ないやあ。まあやってみすけど。」

  (大分昔にやっただけだからうまく出来るか自信ないなあ。ま、やってみるけど。)

「たのむにい。」

  (ほんとに頼むよ。)

「で。このぼっちどっちおすだ?」

  (それでこのボタンどっち押せばいいんだ?)

「お~い大丈夫けえ。」

  (お~い大丈夫なのかい。)

「まかしょたあ言えんの。」

  (安心しろとは言えないな。)

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誰んの

誰のものという意味。他の言い方では「誰のよ」という表現もある。ま、方言かと言われたら違うだろうけど、一応共通語かどうかは疑わしいので。

憶測であるが「誰のの」の「の」が「ん」に変化した。「誰のもの」が「誰んもん」に変わり省略されて「誰んの」(の=ん・もの=の)となった。

「誰んもん」と言う表現は存在するのであながち間違いではないような気もするがもちろん正しいかどうかは根拠がない。

例文

「手帳誰か忘れてるにい。これ誰のよ。あんたの?」

「しいらんやあ。中見てみい。」

「誰んのか知らんだに、勝手に見ちゃってええだかいやあ。」

「置いとく方どうかしてるだでしょんないじゃん。中見んとわからんらあ。」

「一応声かけとくわ。『お~い。手帳!忘れた人おらん?これ誰んの?・・・返事しんなら中見るにい。』・・・だあれも手え挙げんねえ。」

「何ん書いてあるよぉ。見てみい。」

「ほいじゃ見るでねえ。・・・あとで文句ゆっちゃかんにい。」

「誰にゆってるよを。文句ゆうなら持ちくるって。」

誰だけでなく「私んの」(わたしのもの)「うちんの」(家のもの)「どこんの」(どこのもの)とか他にも色々と使う言い方である。

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~たない・~たあない

「したない」だと「したくない」と言う意味になる。大分関西寄りの言葉であろうか。

使い分けは「したない」だと「したくない」で「したあない」だと「したくはない」であろうか。

「する」だけでなく「やる」だと「やりたない・やりたあない」・「持つ」だと「持ちたあない」という風に使われる言い回しであるが「持ちたない」という言い方は遠州ではあまり使わない。

なので「~たない」よりも「~たあない」の方が遠州弁っぽくなるのであろうと推測される。「したくない」で言えば「したない」だと「しんもん」と言い切る言い回しの方が多いのかもしれない。「したあない」だと「したくないんだよねえ」という願望が混ざった感じにも取れる。

例文

「わし近所付き合いしたあない。」

「そんなんじゃかんって。」

「別にしんくたって困りゃせんもん。」

「男衆はそれでええかもしれんけど女衆はそんなじゃやってけれんだにい。色んな付き合いせにゃかんだし持ち回りの当番だってなにかとあるだもんで。」

「ええよどこぞのアパートに住むで。」

「あんた嫁いってから苦労するにいそんなじゃあ。近所の衆らあなんのかんのうっとをしい時も多いけど旦那よりか頼りんなることだって結構あるだで。」

女性はおちおちひきこもりもやってられないみたいだ。

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