1-2・遠州弁さ行

さまさす

冷ますと言う意味。厳密にいうと冷まさせると言う訳が正しいのだが。

「ちゃんとさまささんもんでそうなるだにい。」(きちんと冷まさせないからそうなるんだよ。)

もちろん「さまささん」(冷まさせない)ではなく「さまさん」(冷まさない)を使うことの方が多いのだが。こういう言い方もまだ残っているということで。

例文

「あんたあこれまあちっと置いてさまいたら冷蔵庫入れといて。」

  (ねえこれ暫く置いて冷めたら冷蔵庫に入れておいて。)

「ちゃっとさまさいていれちゃかん?」

  (直ぐ冷ませて入れちゃ駄目?)

「どうやってえ。」

  (どうやってやるの?)

「知らんなんとなく。言いたかっただよお。」

  (いやただなんとなく。言ってみただけ。)

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さんざっぱら

よく使う言葉なのだが、じゃあ共通語に訳せとなるとはたと困る言葉である。

「さんざっぱら使っといて」だと「使うだけ使っといて」と訳すのが妥当か。

「さんざっぱらな目に逢った」なら「散々な目に逢った」となるので、「散々」という訳で良いかと言うとそうでもない。

「さんざっぱら三方っぱらで迷った」だと「これでもかというくらい三方原で迷った」という訳になる「さんざっぱら」。

検索してみると、群馬の方言でもあるようで、「甚だしい様・量や回数が多い様」と説明されている。分布的には関東辺りの方言とされてるようであるが遠州でも使われている言葉である。意味的には大体そうなので多分同じ用法であろうと思われる。

広い地域にわたる表現であるが「~っぱら」という言い回しは非常に遠州弁っぽい感じがする。

例文

「なによーさんざっぱら売れ売れっつっといてこんだあ売るなだ?」

  (なんだよ。あれだけ売れ売れって言っておいて今度は売るなってどういうことだよ。)

「しょんないじゃん。生産追いつかんっちゅうだもん。」

  (しょうがないだろ生産が追いつかないって言うんだから。)

「えらいさんはなに考えてるよー。売る方の身にもなれっつうだよ。」

  (お偉いさんは何考えてるんだ。売る方の身にもなれっていうの。)

「まあそーいわすとお。何もまるきし売るなって訳じゃないだで。」

「おめーなあ。ひたすら頭下げてきて、こんだあ売れんじゃ信用なくすにい。」

夢見たいな話しである。例だから幾らでも書けるけど。

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さす

させると言う意味。「やらさす」だと「やらせる・やらさせようと」・「買わさす」だと「買わせる・買わさせようと」・「行かさす」だと「行かせる・行かせようと」といったような具合。

特に遠州独特ということではないが、共通語ではないことは確かなので記載。

ちなみに「やらす」だと「やらせる・やらせられる」と「やろう(と思った)」・「買わす」だと「買わせる・買わさせられる」と「買おう」・「行かす」だと「行かせる」と「行こう(と思った)」というように。

言いにくい表現では、「させる」が「ささす」・「させさす」。指すも「ささす」指させるだと「さささす」。

早口言葉を作れば「直ぐに笹に刺させる」を「ささっとささんさささす」。

例文

「こんだあなにさすつもりだあ。」

  (今度はなにをさせるつもりなんだ?)

「なにさすたあ随分じゃん。もの頼むだけじゃんかあ。」

  (させるなんてとんでもない。頼みごとがあるだけだよ。)

「おめえの頼みなんかひょんきんなのしかありもしんに。」

  (君の頼みなんていつもとんでもないことばかりじゃないか。)

「んなことあらすけえ。いつだってまともばっかだに。」

  (そんなことないよ。いつも当たり前のことばかりだよ。)

「感覚おかしいぞお。おんしゃ自分やれるか胸に手え当ててからいえやあ。」

  (その感覚おかしいよ。君、自分が出来るかどうか自問してから言ってっくれよ。)

「なにい、わしじゃでけんもんで頼むじゃんかあ。なにゆってるよお。」

  (何を言ってるんだ。自分じゃ出来ないから頼むんじゃないか。)

「なんだかなあ。」

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さっかけ

釣りは私やらないのだが、大分昔近所に釣りが道楽の人がおって。たまに家で喰いおせんくらい釣果があると、おすそわけっつって魚をくれたりしてた。

その人の釣り方が「さっかけ」と言って、餌もつけずに泳いでる魚をでかい針で引っ掛けて獲るという方法だというのを小耳にはさんだ記憶がいくばくかあり。

今切れ口という遠州灘と浜名湖の境みたいなとこの突堤あたりで釣ってたらしい。

今もそういう方法があるのかみんなそういう言い方をしていたのかは不明だが、天竜川の鮎釣りでは「ごろびき」という針のサイズは小さいが同じように餌なしで引っ掛ける方法があるらしいのでもしかしたらポピュラーなものかもしれない。

でも、薄ら記憶なんですが、なんかやっちゃいかんかったらしい。「めっかるとがんこ怒られるで内緒でやらんとかんもんで気い使うだよ。」なんつー会話も憶えてるのでもしかしたら違法に近いものなのかもしんない。禁止区域だからか免許制だからか漁法そのものがからかは知りませんけど。確かに針見して貰った時こんなの人に刺さったら肉んえぐれるなあと子供心に怖い感覚を持った想い出があります。あそこまでいくと釣りではなく狩猟の領域ですわ。

この言葉が遠州独特なのかは知りませんけど一応記載。

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田舎っさー

田舎者と云う意味で「っさー」は「~者」ということになるが、地域によっては「っさ」と伸ばさないところがあるらしい。

遠州は語尾を流すのが特徴でもあるので、そこいら辺は方言だといえなくも無い。そうはいっても福田や大須賀辺りからの出身者であまり語尾を流さない人とかを知っているので遠州地区全てというわけではなさそうではあるが。

でも、私は浜松なので語尾が流れるのが普通使いとしているので「田舎っさ」ではなく「田舎っさー」で通します。発音的には「さあ」ではなく「さー」又は「さぁ」となります。たまあに検索ワードで「田舎っさ」にヒットしてお越しくださる方もおられますが、「田舎っさー」ですのであしからずにくさかった。

「とろくっさー」は単純に「とろくさい」というあきれ返った意味にも使われますが「とろい奴」というニュアンスも含むことになります。

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「~さ」という愛称

じいさ(お爺さん)・ばあさ(おばあさん)・おっかさ(おふくろ)・おとっさ(親父)・にいさ(兄さん)・あねさ(お姉さん)

と言う風に使われる。場合によっては「~さあ」と「あ」がつく表現も存在する。

要は「~さん」と言う表現から「ん」が抜けた訳であるが、「ひょうきん」が「ひょんきん」とか「駄目になってる」が「駄目んなってる」などのように「ん」を多用するのが遠州弁の特徴でもあるのだが、何故かこの表現においては「ん」が省略されている。

例文

「じいさのとこ寄ってったら葱くれた。」

「あれえ助かるやあ。買いいかんで済んだだよお。でもなんか返さんとかんだかいねえ。」

「ええらあ別に。」

「ふんとにい?後であそこの嫁気が利かんって言われやへんらねえ。」

「言われんらあ別に。ばあさうるさいこと言わん人だで、ええと思うよお。」

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あにさ・ねえさ

「あにさ」は兄。「ねえさ」は姉と云う意味。「さ」という表現が遠州弁っぽい。

兄に関しては、あにさの他にあんにい・にいさ・上のが・にいになどがある。

姉に関しては、ねえさの他にあんねえ・あねさ・ねえねなどがある。

弟は舎弟、しゃってえ、下のがなど。妹はいもうとしか普通は使わない。

決まりごとではないが、実の兄弟姉妹に対しては「あにさ・あねさ」はあまり使わない。義理のとか親戚のという感じのつながりで使う場合が多い。もし使うと疎遠な感じに受け取られやすい。「にいさ・ねえさ」が仲が良好な印象(親しみがある)を与える。

例文

「ピアノ買いたいだけどどっか知らん?」

  (ピアノ欲しいんだけどどこかいいとこ知らない?)

「知り合いのあにさ日楽勤めてるもんで。頼んだろか。」

  (知人のお兄さんがヤマハに勤めてるから頼んであげようか。)

「そん前に稼がんとなあ。どっかでバイトん口ねえかやあ。」

  (その前に稼がないとなあ。どこかいいバイト口ないかなあ。)

「うちんねえさ市場でバイトしとるで聞いてみすか。」

  (私の姉が市場でバイトしてるから聞いてみようか。)

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ざあ

歌舞伎だかなんだかの演目「白浪五人男」での有名なセリフ

「知らざあ言って聞かせやしょう。」

で有名な「ざあ」。世間では古い言葉かもしれないが、遠州では当たり前に現役の言葉として使われている。ただし意味使いは変化している。

「しらざあ・・・・」のセリフを今の遠州弁にすると

「知らんだったら教えちゃるにい。だで、よー聞きない。」となる。

今の使い方では、「やらざあ」(やろうぜ)・「買わざあ」(買おうよ)・「行かざあ」(行こうぜ)

といった「~(し)ようよ・~(し)ないと」という意味で使われることが多い。「結婚しようよ」を「結婚ざあ」とは言わない。脱線するがこういう場合は「結婚しまいか」・。無理に「ざあ」を使うとしたら「結婚式やらざあ(まい)」。

古い使い方のほうは「ずば」「ずんば」という意味であろう。辞書によると「ざあ」は「ずば・ずんば」の俗語となっている。なので以下の使い方は方言というよりも昔の日本語をまだ使ってるということになる。

「知らざあ」(知らないんだったら)・「買わざあなるまいて」(買わなくちゃならないだろうに)

ちなみにこちらの意味は現在は「にゃあ」・「んだったら」・「んと」とかの表現に変化してきている。

「知らんだったら」・「買わにゃあ」(買わなくちゃ)・「買わんと」(買わないと)

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さしょうやあ

させろと言う意味。詐称やあ(嘘だあ)とか些少やあ(こまけえ)とかいう意味ではない。

「かしょう」(貸せ)・「まかしょう」(まかせろ)と同じ「しょう」という使い方の言葉。

やらせろと言う意味で「やらしょう」というのもあり、これとの違いは「さしょう」の方が強めの言い方になるということである。まあ共通語の「させろ」と「やらせろ」の違いと同じであるが。

「やらしょ」・「やらしょう」・「やらしょうやあ」と言う使い方があるが、

「さしょ」・「さしょう」・「さしょうやあ」のうち「さしょ」はあまり使わない。言いにくいからであろうか。

「やあ」は意思を示している。「さしょうやあ」の場合だとしたい・する意欲があるという意思を表わしていることになる。

例文

「あーもー見ちゃおれんで、さしょうやあ。ホントとろ、くっさい。」

  (もう見てられないから私にさせろよ。本当要領悪いんだから。)

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「さす」と「す」の使い方

「あいつに頼ますと思っただけどおりゃあせん。」

  (あいつに頼もうと思ったんだけどいないんだ。)

「あいつに頼まさすとしてただけどいんでやんめこいた。」

  (あいつに頼むつもりでいたけどいないから止めにした。)

結局は意味的に対して違いがないのであるが

「す」は「する」の詰まった言い方で

「さす」は「頼まさんとす」という古い言い方の省略されたものと考えられる。決して「盆爺や。御振り防御(ガード)。なんたら・ドス・サントスどす。」とか云う中南米から伝来した言葉ではない。

したがって強引ではあるが、「頼ます」は「頼みとする」。「頼まさす」だと「頼みと願い欲する」(頼んでみる)みたいな感じになる。

で、実は「さす」にはもうひとつの使い方があって

「犬に餌くれすと」(犬に餌をあげようと)

「犬に餌くれさすと」(犬に餌をあげるようにと)

と云う様に「~させんとす」(~させようとする)と云う使い方がある。

つまり「さす」には「~しようとする」と「~させようとする」の使い方がごっちゃ混ぜで曖昧になって使われていると云う事である。これで生活してて不便が生じないのは不思議でもあるのだが、「させる・やらせる」という使い方のほうに重心は傾いているようである。

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