1-2・遠州弁ほ行

ほぉいぃ

共通語だと「ね~え~」であろうか。「あのさあ」みたいな「ちょっと聞いて?」・「ねえ聞いてよ」とかいった感じか。

脳天気風に近い抜けたような甘めのニュアンスで基本女性及び子供言葉。男が使うととても脱力系な間の抜けた感じに聞こえ気色悪い。

頼みにくいことを告げる場合には「あのさあ」が付随して入ることが多い。

知らない人に発することは普通はないと思う。

例文

「ほぉいぃ。」

「なにい。今忙しい。」

「そりゃ分かってるだん・・・。」

「なによを。用んあるならちゃっちゃっと言って。マジで洒落んならんく忙しいだで。」

「あのさあ。」

「だでなによを。」

「帰っていい?」

「あんたなに言ってるよを。このくそ忙しい時にい。見りゃどういう状況だか分かるらあ。」

「駄目けえ。」

「あったりまえじゃん。」

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おぽんぽん

以前「ぽんぽん」は遠州ではオートバイのことを指すと書いたが、世間一般の「ぽんぽん」といえば幼児言葉の「お腹」か「ぽんぽん船」を指す。その一般使いを遠州ではするかといえばもちろんする。

例文

母「あんたそんなアイスばっか二個も三個も食ってたらおポンポン痛くするにい。」

  (あのねえそんなアイスばかり何個も食べてたらお腹壊すよ。)

父「はあ喰うじゃねえよ。」

  (もういい加減にしなさい。)

子「いいじゃん別にい。ポンポン痛かなあもん。」

  (いいでしょ別にお腹痛くなってないもん。)

じいじ「ええらあ好きにさしない。もしおぽんぽん痛くなったら。お医者さん行ってどんぶとい注射してもらやあいいだで。」

  (いいじゃないか好きにさせれば。お腹痛くなったらお医者さんに行って太い注射打ってもらえばいいんだから。)

子「・・・いいもん別にい。」

母「ついでに歯医者もいかすかね。右でばっか噛んでるみたいだで左は沁みるてるだらあ。」

  (ついでに歯医者も行かせようかな。右の方ばかりで噛んでるみたいだから左側は沁みてるんでしょう。)

子「はあいい。やんぴにすりゃいいだら。」

  (もう分かったやめにすればいいんでしょ。)

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ほんだったら

「ほんだったら本人取りこさすでいいわあ」

共通語に訳すと「それなら本人に取りにこさせますから結構です」となる。

別に共通語訳にせずともおそらくは意味が通ぜると思ってるのが遠州人。ホントのところはどうなんでしょうかねえ。関西風の表現なので

「それなら」と訳すが自然であろうか。「そんだったら」という言い方も存在しほぼ意味とか使い方が同じである。

関西風の「ほいたら」も使う。関西で言うのかどうか不明だが「ほいじゃ」というのもある。

「そうしたら」の変形の「ほしたら」・「ほぉしたら」というのも使う。

例文

「いごかんなぁや。」

  (動かないねえ。)

「ほんだったらこうしまい。」

  (それならこうしよう。)

「なにがあ。なにしたいでえ。」

  (なんだよ。何をする気?)

「なにしたいでえって。直すに決まってんじゃんかあ。」

  (何するって直したいに決まってるだろ。)

「無理無理。余計おやすだけだでやめない。」

  (無理無理。余計に壊すだけだからやめときな。)

「ほんじゃどうせるでえ。」

  (それじゃあどうすんだよ。)

「ほかいてきまい。」

  (捨て置いて行こう。)

「随分じゃん。」

  (おい。)

「わしんじゃないでとんじゃかないわ。」

  (オレのじゃないからどうでもいいもん。)

「やあ馬鹿っつらわしのだっつうの。」

  (おい!ふざけてんのかオレのだって。)

「はあ暗くなってきただでくろの方よけときゃ盗る人なんかおらんよ。明日にいさに来て見てもらわすかあ。」

  (もう暗くなってきたから端の方に除けておけば盗られやしないよ。明日兄さんに来てもらって診てもらおうよ。)  

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ほい・ほれ

掘れとか言ってるわけではない。遠州弁の特徴といわれる「だらだにだもんでほいほれやあ」の中の「ほい」・「ほれ」という表現のこと。

共通語で使われる「なんじゃらほい」や「ほほいのほい」とかいうのとは違うような気がする。同じかもしれないが。

「ほれみっせー」(それみたことか・いわんこっちゃない)

「そりゃあほいあれだにい」(そりゃあ、うん、あれだよ)(それは、そう、あれだよ)

男女共用の表現であるが基本女性言葉の比率が高く特に「ほい」はその傾向にあるような気がする。

「ほい」は以前にも記事にしたので「ほれ」を主に述べると

よく出る使い場所は、単語がでてこないとか適切な言葉がみつからない時などに無意識にでてくる意味のない言葉であることが多い。名前とか言葉が出てこないけど言わなくても分かるでしょみたいなニュアンスもある。

例文

「そりゃあほれあれだって。」

  (それはさああれよあれ。)

「なによをあれって。」

  (あれってなに?)

「あれなんつうだったっけやあ。度忘れしちゃったやあ。」

  (なんて言うんだったっけ。度忘れしちゃった。)

「あれじゃ分からんて。」

  (あれじゃあ分からないって。)

「ほれ。こないだ一緒にスーパー行った時のを。」

  (ほらあこの間一緒にスーパー行った時の事。)

「人違うにい。最近わしあんたと行ってもしんにスーパーなんか。」

  (私じゃないよ。最近連れ添ってスーパーなんか行ってないじゃない。)

「んなんことないよを。ついこないだ行ったじゃん洗剤とか安いでって。」

  (そんなことないって。行ったでしょついこの間洗剤とかが安いからって。)

「がんこ前ん話しじゃん。いつの話ししてるよを。」

  (随分前の事じゃない。古いよ。)

「そんな前だったけか。どうりで覚えちゃいんだあ。よかったやあ自分ボケたかと思って心配んなっちゃった。」

  (そんな前だったっけ。どうりで覚えて無い訳だ。ボケが始まったのかと心配になっちゃった。ほっとした。)

「で、なによをあれって。他に言い様ないだけ?」

「だもんでね・・・」以下「はあええ」(もういい)というまで延々と続く

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ほしたらやあ

それじゃさあと云う意味。「ほいたらやあ」という表現もある。他には「そいじゃさあ」・「そんじゃさあ」・「そんでねえ」・「そんじゃねえ」とかがある。「そん」の部分を「ん」と省略する言い方もある。

決して「干したらさあ」とかいう意味ではない。

「そうしたらねえ」が「そしたらやあ」になって「ほしたらやあ」と変化した経緯と予想される。「そ」が「ほ」に変わるのは関西でも行われているので別に珍しいことではないので、関西風の遠州弁ということになる。

江戸弁の原型が三河弁という説もあるので、当然遠州も関東風である筈なのだが実際は関西と関東がちゃんぽんに入り混じった方言なのである。

にも拘らず遠州弁そのものは異臭を放つ言葉で関東人にも関西人にも馴染まないらしい。

例文

「やあ、ど重くていごかんにい。どうせすかやあ。」

  (ねえ物凄く重くて動かないよお。どうしようかねえ。)

「ほしたらやあ、悪いだけどちゃっと倉庫まで飛んでってまあちっと軽いの持って来てくれんかいやあ。」

  (そうしたらねえ、手数掛けて申し訳ないけど急いで倉庫まで行って軽い方(の部品)を持ってきてくれないかなあ。)

「そりゃええだけど。このどんもいのどうせるだあ。ほっぱかいといてええだ?」

  (それはいいんだけどね。このくそ重いのはどうするの。放置しといていいの?)

「とりあえずやっちまわい。先やる事終えんとおえんら。」

  (とりあえず終わらせようぜ。先にやるべきこと終わらせないと。)

「今の洒落?よをこんな時に言えるなあやあ。」

「ばかっつら。んな訳ぁあらすかや。ちゃっと持ってこいやあ。」

  (馬鹿言ってんじゃないよ。そんな訳ないだろ。直ぐ持って来いよ。)

「はいね。」

  (あいよ。)

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ほんでもねえ

それでもねえ・とはいってもねえという意味。決して「本でも無い」とか「そうでもない」とか言ってる訳ではない。

「ほいでもねえ」という言い方もあり意味使いはほぼ同じ。

野郎言葉だと「ねえ」が「やあ」に代わり「ほんでもやあ」となる。

使い場所としては一応相手の言い分に理解・納得はしてるのだがそれでもなんかしっくりこないというか満足いっていないような反論の一歩手前のような場合に使われることが多い。

理解・納得しておらず反論する場合には「つったってねえ」とか「ふんだだこんこいたってやあ」とかの言い方を使う。

掛川辺りだと「だけえが」という表現もあるが浜松ではあまり使わない表現である。

例文(つったってねえの例文と同じ状況ですので比較してくだされ)

「はあ、たいがい済んだらあ。結構早く済んだなぁや。あたぁちゃっと片して帰らまいか。」

  (もうだいたい終わっただろ。思ったより早く済んだね。後はそそくさと片づけして帰ろうよ。)

「ほんでもねえ。時間までおらんとやばくねえ?」

  (それでもねえ。時間まではいないとまずいんじゃないか?)

「ええらあ別にい。」

  (いいだろ特に問題ないだろ。)

「それになんだあ。やらにゃかんぶん計算してわしらよこいただもんでなんか忘れかあっちゃいんだかいやあ。」

  (それと、やる作業の処理時間計算した上で俺たち来てるんだからなんかやり残してないか心配だなあ。)

「腕んよかっただらあ。心配せんでもいいって。」

  (腕がよかったんじゃないの。心配しなくてもいいって。)

「ほうけえ。」

  (そうかなあ。)

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ほっぽなげる

放り投げると言う意味。軽度の遠州弁だと「ほっぽりなげる」。ただし広範囲の地域で使われている表現で遠州独特ではない。

「ほっぽる」は以前記事にもしたが「放る」という意味。

「ほうらかす」・「ほかしなげる」も「放り投げる」という意味で、この使い分けについては「ほっぽる」という表現の方が「ほうる」よりぞんざいに聞こえるので雑の度合いの違いであろうか。「ほかす」は打ち捨てるというイメージが強くなる。ただし放り投げる自体丁寧な扱いではないので五十歩百歩ではあるが。

「ほうる」だと上や遠くにに放り投げるイメージで「ほっぽる」だと下や近くに投げ出すイメージが湧く。それに「投げる」がつくと慌ててとかいやんなってみたいななにがしかの感情がこもる感じになるような気がする。

直接的な物を投げる行為以外にも仕事とか作業とかを放り投げるとかいう場合には「ほうらかす」ではなく「ほっぽりなげる」を使うことが多い。この場合同じ意味で「うっちゃる」・「うっちゃらかす」というのがある。

強度の遠州弁の場合は「ほっぽなげる」・「ほっぽらかす」・「ほっぽかす」と表現する。ただし「らかす」・「かす」は放るというより放置というニュアンスが強くなることがる。

合ってるかどうか自信が無いが、名古屋的だと「ほっぽらす」がらしい感じになる。遠州ではほとんどこの表現は使われない。

例文

「あんたあ仕事ほっぽなげてどこ行ってたよを。」

  (あんた仕事そっちのけでどこ行ってたのよ。)

「なんか表どんちゃんしてたもんで見い行っただよを。」

  (なにやら表が賑やかしいもんだから何事かと思って。)

「なにやってんだか。」

  (なにしてんだか。)

「それがわからんだよを。人ん一杯でよを見えんくてやあ。なんしょ音だけなんかどんちゃんやってた。」

  (それがさ。人が一杯でよく見えなくてねわかんないんだ。とにかく音だけは賑やかだった。)

「そんなねえ仕事うっちゃってまで見いいって何ん楽しいよを。」

  (あのねえ仕事放り投げてまで見に行って何が楽しいの?)

「だで、見ちゃいんだで分からんだよを。」

  (だから見えなかったから何楽しんでるのか分からないんだ。)

こういう仕事しろよと言ってる人と行った出来事を説明しようとやっきになってる人との噛み合わない会話は第三者としては面白く聞き入ってしまって結構楽しい。

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ほいとく

干しておくと言う意味。

「し」が「い」に変わると言う遠州弁の特徴である言い方。

言葉遊びとしては

「ほいほいほいほいちゃかんに」(ねえ、いい加減に干さないでよ。)

他には「出しておく」を「だいとく」・「回しておく」を「まわいとく」などなど。

例文

「あんた着たきり雀じゃないだで、洗うかなにかしなよ。」

「服じゃありもしんに。それにしょっちゅう使うだで使いたい時に使えんじゃ困るだあれ。別に汚くしてても死にゃあせんだでいいじゃんか。」

「ちゃっと洗やあ済むこんじゃん。かしない。」

「やだよを。」

「ほいじゃ天気いいでほいとくくらいしなよを。」

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ほいほい

「あんた、知らん人にほいほいついてっちゃかんにい。」

  (聞きなさい。知らない人に簡単についていかないようにね。)

「ほいほい」という言葉には「軽薄」・「安易」・「安直」・「人が良すぎる」とかいうニュアンスがある。

もっとも、辞書にも載ってるし、ごきぶりほいほいとかいう商品もあるくらいだから方言ではないだろうが、上記の例文とかの使い方は遠州では多用される表現なので記載。

例文1

「じいじ。孫ん可愛いからってなんでもほいほい買ってやっちゃかんにい癖んなるで。」

  (おじいちゃん。孫が可愛いからっていってなんでもすぐ買い与えないでよ。癖になるから。)

「ホントだよ。言われりゃなんでもほいほい買うだでホントしょんない。」

  (そうだよ。請われればなんでも直ぐ買っちゃうんだからもう。)

「まあた、うちのガキ嘘泣きどんまいでな。」

  (それにうちのガキは嘘泣きがうまいからなあ。)

家族全員で注意されてる図。

例文2

「あんたあ知らん人にほいほいついてっちゃかんにい。」

「失礼しちゃうやあ、幾つだと思ってるよを子供じゃあるまいし。」

「なにゆってるよお。こないだはなに?」

「あれはナンパされたの。」

「どう違うよぉ。」

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ほかす

以前に書いた記事の補足。

意味としては、放置する・途中で止める・放る、などとなる。

「ほっぽりなげる」よりは程度は低い。「ほっぽりなげる」だと放棄する・放り投げるといった意味になる。

「ほうらかす」も放り投げるという意味で使われるが「ほっぽりなげる」よりは柔らかい表現になる。

例文

「あいつぁ仕事ほかいてどこん行きくさっただあ。」

  (あいつは仕事放ってどこ行ったんだ。)

「そんだけじゃないにい。弁当喰いかけでそれんほっぽらかいてどっかとんでった。」

  (それだけじゃないよ。お弁当食べてたけど置き去りにして急いでどこかに行っちゃった。)

「なにせい行っただかいやあ聞いちゃいんだ?」

  (なにしに行ったんだ?聞いてないのか。)

「聞いちゃいんだわ。」

  (聞いてないよ。)

「ま、帰ってきたら説教だの。」

  (こりゃ戻ってきたら説教だな。)

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