1-2・遠州弁ふ行

ふんと・ふんとに

「本当」・「本当に」と言っている。

「本当そう思うよ」だと「ふんとそう思うだよ」とかになる。別に笑わせようとかいう意図は全くなく真面目に言っているので「ふんと」と言って笑われたりすると気分を害する。

遠州弁においての「あんた」と「ホント」はある意味単なる調子合わせで言葉自体に意味がないことが多く。本気で「本当に」といいたい場合に調子合わせの「ホント」と間違われないように「ふんと」とする事があるということ。

したがってただ単に訛ったということだけでなく使い分けの必要に迫られて編み出された表現ではないかとも思える。まあ勝手な想像だけど。

実際は言い易いから「ほ」が「ふ」に変わったんだろうかな。

「ほんと」というよりも「ふんと」の方がびっくりしてるというニュアンスが増すという感じも気のせいかもしれないがあるのではないか。驚いた時によく使われるのはそういうせいかもしれない。

男女共用の表現であろう。

例文

「ふんとにけえ。なんかうそっぽく聞こえるだけどやあ。」

  (本当なの?なんかうそ臭いんだけど。)

「ほんとだって。あんたも信じん人だねえ。そんな疑り深いとホント嫌われるにい。」

  (ホントだって。疑り深いねえあんたは。そんな疑り深いと皆に嫌われるよ。)

「いらんこんじゃん。でもそれふんとにふんとけえ。」

  (余計なお世話だよ。でもそれ本当に本当なの?)

「だでさっきからそうゆってるじゃんほんとだってえ。」

  (だからさっきからそう言ってるじゃないかホントだって。)

「なあんか嘘くさく聞こえるだけどやあ。」

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もう!ぶつにい

 小さい頃母親にこう言われると頭を守るという条件反射が働く言葉。

「ぶつ」は「打つ」の強調形として辞書にも記載されている共通語。これに「にい」がつくと遠州弁っぽいよなあと思って記載。共通語だと「もうぶつよっ」であろうか。

以前の記事で「ぶっさぐられる」を書いたがそれの別解釈。(もちろんこれも憶測で根拠なし。)

「ぶっさぐる」という表現が遠州弁にあるが、「打ち据える」が変形してこういう表現になったのか直訳の意味通りの「ぶんなぐる」の変形なのか。又は「打つ」とかではなく「ぶっとび」・「ぶっ放す」みたいな勢いの強さを表す意味使いの「ぶつ」+「さぐり」という構成なのか。ちなみに「さぐり」がどういう意味かと問われると?。近い言葉で「さくり」(しゃっくり)というのが古語辞典に載っていてしゃっくりという意味以外にもひっくひっくみたいな「しゃくりあげて激しく泣くさま」というものもあり、「ぶっさぐる」行為が泣かせるくらいぶつという解釈であれば「さくる」が変形して「さぐる」になったんかいなとも思えてくる。無論当然だが想像であって正解ではないのであしからず。でも前記事で「さぐる」=「下げる」ではないかと想像したよりかはそれらしく感じるけど気のせいか。

実用として子供に親がするのは「ぶつ」のであって「ぶっさぐる」という表現をしないのは言うこときかせるためで泣かせるためにぶつのではないからかなとも思える。でも恋人とか後輩とかの相手には「ぶっさぐる」使うからいまいち説得力には欠けるが。焼きいれる感じである事は間違いない「ぶっさぐる」という言葉であろう。

「ぶっさ」+「ぐる」の可能性があるかというと「ぶっさげる」とか「ぶっさがる」みたいな表現はないので多分「ぶつ」+「さぐる」なんだろうなと。「ぶっさぐらす」とか「ぶっさぐって」とかはあるから。

例文

「も~ ホントゆうこときかんだで。もう!ぶつにい!」

  (もう~言うこと聞かないんだから。ぶつよっ。)

「ぶたんだっていいじゃん。」

  (ぶたなくたっていいでしょ。)

「ならおとなしくゆうこと聞くだ?」

  (それなら大人しく言うこと聞けるの?)

「だってえ・・・・」

「もう~はっきりしん。だで いや。」

   (も~はっきりしないんだから。やんなっちゃう。)

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ぶっさぐられる

直訳すれば、ぶん殴られると言う意味。

「ぶっさぐる」が「ぶっ叩く」という意味でそのやられる側の表現。

喧嘩とかでの殴った殴られたで使う場合もあるが、どちらかというとお仕置き系な怒られるというニュアンスが強い場合で使われることが多い。

なので「注意される」と訳した方が意味的には合ってる事が多い。

以下は憶測であるが、ぶっ飛ぶ・ぶっ放すみたいな使い方の「ぶっ」と「さぐ」又は「さぐる」で構成された言葉であろうかそれとも「ぶつ」(叩く)と「さぐ」の合体なのか。「さぐ」が古語辞典にある「下ぐ」であるとするならば「強い剣幕で(又は叩いてでも)下げる・退かせる」という意味であろうか。つまり強制的却下・是正みたいな。

ただし「ぶっ」無しで「さぐる・さぐられる」という使い方はしていないので多分にうそ臭い憶測ではある。(追記09/03/16 「もうっぶつにい」という記事で別の解釈案を出しました。もちろん憶測であることに変わりありませんが。)

例文

「まあたそんなしょろしょろしとると班長にぶっさぐられるにい。」

「来たらそん時気合い入れりゃあ済むこんだあれ。年がら年中気合入れ捲くりじゃあ疲れちまわあ。」

「視野ん狭いだか?後ろに班長おるにい。しかも腕組んでこっち睨んでるにい。」

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ぶんむくれる

むくれるを強調したような言葉で全国的に広がる表現であろうが、遠州でも使われていると言うことで記載。

むくれるが不機嫌な表情・態度を表わす言葉であるが、遠州では怒りを含んでのすねる・ふくれると言うニュアンスでも使われることが多い。

同じような言葉で「ちんぷりかある」という表現があるが、ふてくされると言う意味では同じであるが「ちんぷりかある」との使い分けは「ちんぷりかある」が「ぷんぷん」な状態で「ぶんむくれる」は「ふんっ!」という感じ。

「ぶん」という表現は遠州弁にあってるらしく「ぶんぶん」(いけいけ)・「ぶん撒く」(勢いよく撒く)・「ぶん投げる」(放り投げる)とかいった言い回しは心地よく感じる。

例文

「今ぶんむくれてるもんで口利いちゃくれんみたい。」

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ぶすくれる

ふてくされるとかいった意味。

けっして「ブスはいらないからあげる」と言ってる訳ではない。

全国的な方言であるらしく、標準語ではない共通語というレベルの言葉であろうか。意味的にもほぼ全国同様の使われ方と思われる。

遠州弁では「ちんぷりかある」・「ぶんむくれる」とかいう表現も存在しており多くの人は「ぶすくれる」は共通語だという認識を持っている。なんとなく古語辞典に出てきそうな古い日本語のような気もする。しかし古語辞典には載ってなかった。

想像するに「くれる」というのは「途方に暮れる」の「暮れる」で「ぶすに暮れる」が変化したもの。「ぶすっとふくれる」が縮こまって「ぶすくれる」になったもの。とかが想像できる。もちろん定かではない。

例文

「あいつ今機嫌悪いだで近寄らん方いいってさ。」

  (あいつ今機嫌が悪いそうだから近寄らない方がいいってさ。)

「なんでえぶすくれとるだけえ。」

  (どうしたの?ふてくされてるって?)

「いんやあちんぷりかってるって聞いたにい。」

  (う~んどうもぷりぷり怒ってる状態らしいよ。)

「なにしたでえそんなあ。」

  (なんでそうなったの?)

「いやあ、よー知らんだけど。なんか喰いそびれたらしいに。」

  (うーんよくは知らないんだけどね。なんか喰いそびれたらしい。)

「ほいじゃあいつぶんむくれてるじゃねえのかがんこ食い意地張っとるで。」

  (それじゃああいつ暴発寸前じゃないのか。なにしろ食い意地張ってるからなあ。)

「かもね。」

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ぶんまく

撒き散らすと言う意味。ぶちまけると言うほうが適切かというとそういった感情的な発露による行為ではない。勢いよくとかいったニュアンスである。

振り撒くという表現の方が近いか?しかし「振り」がなんで「ぶん」に変わるのか説明が付かないのでこれが正しい訳ではなかろうて。

ちなみに、「ぶちまける」だと「ぶちまく」という使い方の方がしっくりはする。

例文

「庭木に水くれといて。」

  (庭木に水まいといて。)

「どこ撒きゃええよお。めえる範囲ぶんまきゃええだ?」

  (どこに撒けばいいの?見える範囲全部撒き散らせばいいの?)

「加減っちゅうもん知らんだかおんしゃあ。常識の範囲内でやれやあ。」

  (程度ってものがあるだろう。常識の範囲内でやってくれよ。)

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ぶんぶん

「どーでえ、調子は?」

「もーぶんぶんよ。」

共通語に直すとしたら、イケイケ・絶好調・ノリノリといったところでしょうか。共通語でぶんぶんといったら、エンジンをぶんぶん回すみたいなぶん回すという意味になるが、遠州ではそちらも使っている。アクセントが違うので使い分けていて聞き違えることはない。

ぶん回すのぶんぶんはBUnBUn。絶好調のぶんぶんはbuNbuN。

仕事とかの真面目な場所で使う言葉ではないので、「○○君頼んだ仕事は順調に進んでる?」「あ!課長もうぶんぶんっすよ。」などと使ったら新しい仕事先を考えた方がいい位なので注意が必要である。というか使ってはいけない。

ほんとに気心の知れた仲間内の間で使う言葉である。

「エンジンちっといぜったもんでわしんポンポンはあぶんぶんよ。そんかわし燃費よかあねえもんでガソリンだあだあに喰うけどやー。」

  (エンジン少し改良したから俺のバイクもう最高だぜ。そのかわり燃費良くないからガソリン物凄く喰うけどね)

「ぶんぶんに蚊に喰われた。馬鹿かゆい。」

  (そこいらじゅう蚊に喰われてしまって、とても痒い。)

共通語の「プンプン」の代わりに使う場合もある。というかプンプンよりもっとどぎつい場合で使われる。

「くいもん屋入ったらさあ。横の席の姉ちゃん香水ぶんぶんで食う気失せたわ。」

  (食べ物屋に入ったんだよ。そうしたら隣のお姉さんの香水がきつくてね食欲なくなっちゃったよ。)

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ぶしょい

「ぶしょったい」という言葉が方言だとは知らなんだ。ということは東京みたいな人ががんこいるとこで、「ぶしょったい」と叫んで振り向く人がいれば、それが静岡県人だと判断するに充分な見分け方になるということか。

つーこたあ当然「ぶしょい」も遠州弁なのか。

だらしない・不精という意味であるが元は多分不精が変形したものと想像できる。その他には、似合わない・格好悪いという意味を含む場合もある。

見分け方話しの続きだが、「ぶしょったい」は静岡県全域で通用するし、もしかしたら三河・甲府の衆らも使ってるかもしれないので、遠州人かどうかを判断するには「やー、馬鹿ぶしょったい。」又は「やーどぶしょい格好しとるじゃねーよ。」といえば限定できる。・・・かもしれない。

使用例1

洋服売り場で試着をしてる時の会話

「この服どう?」

「ぶしょったい。」

この場合だらしないというよりも、似合わないという意味合いになる。ただしここまで言い切るとなると物凄い勇気が必要である。こういう場で使うとセンスがないと暗に言ってることになるからである。

もっと強烈な表現は「うー どぶしょい。馬ぁ鹿ぶしょったい。」となるが現実的にはこっちの方が使われてるような気がしないでもない。「ぶしょったい」と冷たく言い放つよりも柔らかく聞こえるからであろうか。

使用例2

「ほれあんた、はあじきにお客さんみえるだで、そんなぶしょったい格好いつまでもしてちゃかん。ちゃっと着替えんと。」

  (ほらあ、もうすぐお客さんおみえになるんだから、いつまでもだらしない格好してないで、すぐ着替えなさい。)

「どこんぶしょいだあ。ぶしょくありもへんに。」

  (どこがだらしないよ。だらしなくなんかない。)

「ぶしょったい」と「ぶしょい」の使い分けは言葉の意味が同じなので、明確にはない。

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