1-2・遠州弁て行

てめえ

一般的な共通語では「おまえ」を賤しめていう表現ということであろうが

遠州弁での使われ方にはそれとは別に例えば「てめえが」だと「自分が」という使い方をする場合がある。「手前」が訛ってかく相成ったかと推察するところである。まあそうはいっても「手前味噌」を「てめえ味噌」とは言わないので説得力はないが。

まあとにかく「おまえ」というニュアンスではなく「自分で」・「自力で」とかいったニュアンスが強いということで賤しめのニュアンスはないというところが共通語の「てめえ」とは異なるところであろうか。

多分に江戸っ子風味があるので遠州独特ということではなかろうがまだ生き残ってる地域でもあろうということで記載。基本男言葉であろうがごく稀に女性の使い手を見る事はある。そういう女性は年齢・血縁関係に関わらず「おっかさ」と呼ばれることが多い。

例文

「どうしようこれ。」

「甘えちゃかん。てめえでなんとかするだあれ。」

  (人に頼るなよ自力でなんとかするもんだ。)

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でんぶう

「デブ」のこと。「ぶう」が鳴き声とリンクしてそうでより一層丸み感が増す感じである。男女兼用だがまあ基本女子は使わないのが淑女の条件ではある。

「でんぶ」だと当たり前に「臀部」と紛らわしいので普通はこういう言い方はしないが存在しても不思議ではない。

自身を指して言う言葉では決してなく直に言う言葉でもない。あくまで陰口として本人の居ない場所とかで使われる表現であろう。「愛嬌のある」ニュアンスであり悪意でもって発することより会話の話題の中に出てくるその人物を身体的特徴で表現してることが多い。もちろん共通語の「デブ」もそうだが言われた本人はいたく傷つく表現なので使わないに越したことはない。

同様な言葉で「チビ」を「ちんびい」という。「でんぶう」は男女共用表現だが「ちんびい」は男言葉。

例文

A「うちのおっかさ でんぶう だもんで信号黄いなくなって慌てにゃかん時息ハアハア汗だあだあでえ。」

  (オレの女房太ってるから信号の変わり際に走ったりなんかするとすぐ息がハアハアで汗だくになる。)

B「うちんのなんかけったぁ乗らすとタイヤ爆ぜつしそうだにい。」

  (おれの女房なんか自転車乗るとタイヤがパンクしそうだぜ。)

C「なんつう おっかさ自慢してるでえ。嗤える話しじゃねえらあ。」

  (どういう女房自慢なんだ?とてもじゃないけど嗤えないけど。)

B「病気自慢するようになっちゃお終いだら。その手前でとどまってるだでいいこんじゃん。」

  (病気を自慢するようになったらお終いだろう。その一歩手前で踏みとどまってるんだからいいの。)

C「そをゆうもんか?洒落に聞こえんけど。」

  (そういうものなの?洒落には聞こえないけど。)

A「いいだよを。自虐ネタにゃ違いないだで。」

  (いいんだよ。自虐ネタには変わりないんだから。)

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でで

「でで」これだけだとなんのこっちゃいということですが。使用例を挙げれば

「行くででねえ」(行くからねえ)

「買うででねえ」(買うからねえ)

という風に共通語に訳すと「~するから」とかいうような意味使いになることもあれば

「よっちゃんのででいいらあ」(よっちゃんのものでいいだろう)

といった「もので」を略した意味使いもあり結構幅広い。話しをややこしくするが

「のでで」を「のので」と替えて「よっちゃんののでいいらあ」としても意味は同じになる。

元に戻すが、「ででねえ」でひとつの言葉とした方が分かり易いのかもしれないが「ねえ」以外にも「さあ」とか「やあ」が付くので「でで」で記事とした。

単純に話しの頭で「ででねえ」とか「ででさあ」という使い方だと「それでねえ」・「それでさあ」とかいう意味になる。

似たような表現で「だでねえ」というものがあるがニュアンスが微妙に異なる。では「買うだでねえ」(買うんだからねえ)とはどう違うかというと「だでねえ」は買うという事が主になる勢いがあるが「ででねえ」だと何らかの事由があってそうなったという感じになる。一概にこうだと決め付け出来ないけれども「だで」は「から」・「でで」だと「ので」って感じであろうか。

例文

「今日ちょっと買い物してくで帰り遅れるででねえ。」

「何買い行くよを。」

「いいじゃん別に。人が何買おうがいらんこんじゃん。」

「スーパー行くならついでに買ってきて欲しいもんあるだよ。」

「んなとこ寄りゃせんよ。自分が行きゃあいいじゃん。」

「こうみえても忙しいだでねえ。あんたと違って。」

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てっだって・てんだって

どちらも「手伝って」と言っている。両者に意味的な違いはなく個人の好き好きによる違いであろう。

例文

「ほい。あんたあ暇してるならてんだってやあ。」

  (ねえちょっと暇なら手伝って頂戴。)

「なにやらすよを。」

  (何をさせようって言うの。)

「これどんもくて持ちおせんだで、そっち持って。」

  (これが物凄く重たくて一人じゃ持てないからそっち持ってよ。)

「てっだって腰おやいちゃかなわんで人呼んで来すわ。」

  (無理して手伝って腰痛めちゃ敵わないから人呼んでくるよ。)

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出とらす

出ておられるといった多少敬語めいた表現。

名古屋方面だと「出とりゃあす」とかになるんだろうか。それとは違うから「出とらす」は遠州弁なのかなと想像。

個人的に使い勝手がいいので記事とかでよく使っている。が、実際の日常会話ではかしこまるとかいう人もそうはいないので左程頻繁に出てくる言葉ではない。なのでこの表現が遠州弁と言い切れる程のものでなし。

例文

「こないだのテレビ見た?」

「なんでそんなの見てるよお。」

「いんやあ○○さんが出とらしたもんで見んとなあと思って。」

  (いやあね。○○さんが出ておられたから見ないといけないなあと思ってさあ。)

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でねえ

「それでねえ」の略された表現。言葉自体は特に対した意味はなく遠州弁ということでもないと思われるのだが、使用頻度がとても高いのが特徴であろうか。年齢的に上の人は「あんたあ」・「ほいでえ」とかが多くなり「でねえ」は中堅どころの年齢以下で頻繁に出てくる会話をつなげる際の調子あわせの言葉である。

基本的には親しい関係性である場合に多く使われる。馴れ馴れしい表現なのであまり親しくない場合に使われた場合言われた方は下に見られてるという印象を受ける。

他の言い回しとしては「そんでねえ」・「ほんでねえ」・「でさあ」・「ふんでねえ」とかがある。「だもんでねえ」というのもあるがこれは「だもんで」+「ねえ」なのでちょっと違う。

「でさあ」と「でねえ」の違いについては殆ど違いはなく若干「ねえ」の方が若干近しい印象を与えるくらいであろうか。

遠州弁を知らない人が駅とか人の多いところにいたら頻繁にいたるところから「でねえ」・「でねえ」と聞こえてきて「何が出ないんだ?」と不思議に一瞬思ったがそうかここの人達はいつもパチンコ話しで盛り上がってるんだと納得したという作り話を聞いたことがあるが笑えない話しである。確かに静岡県でのパチンコのCm量は多いのだろうけど。

例文

「でねえ、今日今から行かんとかんだよ。」

「ほうけえ、ほいじゃ頑張って行ってきない。」

「でねえ、やあっとかかりそうだもんで帰り遅いだよ多分。」

「分かった。」

「でねえ、もしかすると酒よばれるかもしれんでえ。」

「でなによお。」

「そんときゃ迎え来てくれん?」

「甘えちゃかん。」

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でばる

出張る。辞書にもあり「出張する」という意味の方言形と記載されてる。

それ以外にも遠州というかうちらのごく近辺では「でしゃばる」の短縮形というニュアンスの使い方もされていて二通りの意味合いを兼ね備えている。この使い方はあまり綺麗な使い方で無い(感謝されていない)ことは確かであろうて。(ごく一部であろうからこの使い方を方言とするには非常に無理があるかもしれないが一応記載した。)

例文1

「さっきぃがんこ客ん大声だいてたけど。なによーあれ。」

  (さっきお客が物凄く大きな声出してたけど。あれなにがあったの。)

「あれねえ。まからんもんであだけただよ。」

  (あれはねえ。まけないもんだからごね捲くってたんだ。)

「で、どうしたよー。」

  (それでどうやって決着ついたの?)

「課長でばってくれて文句はねかやいてくれた。」

  (課長が出てくれて文句はねのけてくれた。)

例文2

「こないだの催しどうだったよお。」

  (この間の催しはどうだった?)

「部長でばって仕切り捲くってた。」

  (部長が出てきて仕切り捲くってたよ。)

「そりゃそりゃご苦労なこって。さぞやりづらかったらあ。」

  (それは大変だったねえ。さぞややりづらかっただろう。)

「当然じゃん。やりいい訳ないらあ。でも○○君が『部長準備にもでんと今日に限って来るなんてどうしたよー』って社長のいるまんまえでゆったもんで痛快だったにい。」

  (当然だろ。やり易い訳ないだろ。でもね、○○君がさ『部長準備には出ないで今日に限って来るなんてどうしたんですか?』って社長のいる前で言ったから痛快だったよ。)

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~てんで

~してないでと言う意味。特に遠州独特ではなかろうが一応記載。「ない」という打消しの表現が「ん」に変わるのは遠州弁の特徴ではあるが。

江戸弁の「がってんでぇ」(承知)とは当然違う。

例文

「やあ、くっちゃべってんでちゃっと行けよお。」

  (ほら、余計なおしゃべりしてないで早く行って。)

「うっさいい。今行かすかと思ってったじゃんかあ。いちいちいわんだって分かってるっつうの。こうるさいやあ。」

  (なんだよーもう。今行こうとしてたところ。くどく言わなくても分かってるって。)

「そう思ってすならとっとと行けやあ。」

  (そう思ってるなら直ぐ行ってよ。)

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です

遠州人が改まったような場所で話しをしなくてはならない時、よく付け足す言葉。

基本遠州弁はタメ言葉で敬語らしき目上の人に言うような表現は少ないので、ですます調になればとりあえずはそういうつもりではいるという意思表示にはなる。が、なんかおかしい。

例文

「今日は雨降るですよぉ。」

  (今日は雨が降ると思います。)

遠州弁で普通に言うと「今日は雨振るにい。」又は「今日雨だらあ。」

「私買い行くですよ。」

  (私が買いに行きますから。)

普段だと「わし買い行くでえ。」又は「わしん買いいかすでええって。」

「そうするですとぉなんですわぁ・・」

  (そうしますとですねえあのう・・)

普通だと「そうせっとなんしょやあ」又は「だであれでえ」

言ってて「しまった!丁寧に直さないと」と方向転換するような感じである。こういう感じがなんとなく好きなので自分のブログではこの表現を多用してますです。

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でけすかあ

「できすかあ」・「できるけえ」とも言う。意味は、出来る訳がないだろう。又は無理ゆうなよ。共通語の「(そんなの)できるかあ!」と同じニュアンス。

開き直りというかあだけたときに使われることが多い。似たような表現で「知らん」と言うのもある。他には「でけへん」・「できひん」・「できゃせん」とかもある。

例文

「んなのでけすかあ」

  (そんなの出来るわけないだろ。)

「いんやおんしゃならやりかねん。」

  (いやいや君ならやりかねない。)

「ばかこいちゃかんて。人んなんだと思ってるよー。」

  (冗談言うなよ。人をなんだと思ってるんだ。)

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