1-2・遠州弁ち行

ちょっくら

最近は死語化しつつある感じのする「ちょっくら」。まあ全国的に通用する表現でこれを遠州弁の中にいれるというのは無謀なことではあるが。

大雑把に訳せば「ちょっと」という意味使いであろうか。最近は「ちっと」・「ちいと」が替わってよく使われている気がする。なので今はどちらかというとじじばばの言葉というイメージがする。年配の人はよく使ってたなあそういえば。

その他の意味として(ネットで検索してみたところでは)「少し」という意味とも説明されているところがあったけれど、「少しの間」というなら分かるけど「少々」とかいった意味はないので、地域によって違いがあるんだろうか。うちのとこではあくまで時間の経過の短さを表わすのみで「少し」という意味で使う人はちょっくら見かけんけどね。

よりハードにするなら「ちょっくらちょっと」

「ほんのちょっくら」とかいう使い方があったかどうかは記憶にない。

記憶にあるのは「なんしょちょっくら」とか。

例文

「なんか外んきぜわしないやあ。なにんあっただかいねえ。」

  (なんか外が騒々しいねえ。何があったんだろ。)

「わしん ちょっくら いって みて こすか。」

  (自分ちょっと行って視てこようか。)

「駄目だよあんたじゃいったっきりで戻ってきやせんくなるだで。」

  (駄目だよあんたじゃあ行きっぱなしで戻ってこないんだから。)

「失礼しちゃうやあ。戻らんかったことありもしん。」

  (随分だなあ。戻らなかったことなんかないじゃないか。)

「あんたのちょっくらって人と違いすぎるだよ。」

  (あんたのちょっとは長すぎる。)

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ちゃっと

「直ぐに」・「早く」とか言う急かす目的の言葉。特に遠州独特ということもないのだが普段よく使われるので記載。

「ちゃっちゃと」と「ちゃちゃっと」という表現と同類か。多少ニュアンスは変わる。

「ちゃっと買わんと売り切れるにい」(直ぐ買わないと売り切れちゃうよ)

「ちゃちゃっと買わんと売り切れるにい」(他の用は後にしてまず先に買わないと売り切れになっちゃうよ)

「ちゃっちゃと買わんと売り切れるにい」(のんびりしてると売り切れちゃうよ)

幾分誇張気味の訳ではあるがこういった違いがある。

語呂遊びでいえば以前どこかにも書いたが

「ちゃっとちゃちゃっとチャットやってちゃっちゃとチャート作らんとを、あんたちゃあしてちゃちゃいれてる場合じゃないだにい」(早くパパッとチャットやってとっととチャートを作らないと、のんびりお茶してふざけてる場合じゃないでしょ。)

とか言う風なのが思い浮かぶ。

例文

「これよさそうじゃん。買うかあ。」

  (これよさげじゃない?買おうよ。)

「テレビじゃみばとかけっこく写してるだでどうだか分からんて。実物見て買わんと往生こくにい。」

  (テレビだと見映えよく写してるんだからなんともいえないな。実物確かめて買わないと後悔するよ。)

「限定だって。ちゃっと申し込みをっつってるにい。買わまい電話するでねえ。」

  (限定なんだって。今すぐお申し込みをって言ってるよ。買おうよ電話するからね。)

「人の話し聞いてる?似たようなもん近くの店屋にもあるらあ。」

  (人の話しを聞いてる?同じようなもの近くのお店にもあるだろ。)

「あのねえ、買って後悔するのと買わずに後悔するのとどう違うと思う?」

「大して違わんらあ。」

  (大した違いなんてないだろ。)

「馬鹿こいちゃかんて。欲しいと思ったもん買って後悔したらやいやいで仕舞いだけど買わずに後悔したらあん時買っときゃあっつって一生ゆうだにい。」

  (何言ってるの。欲しいと思ったもの買って後悔したらあ~あで済むけど買わないで後悔したらあの時買っておけばって一生言うことになるんだよ。)

「欲しいじゃなくて必要なもん買えやあ。」

  (欲しいものじゃなくて必要なものを買えよな。)

「消費は美徳じゃん。なにいかんよを。」

  (消費は美徳でしょどこがいけないの?)

「いつの時代の話ししてるだあ。」

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違うだ?違わん?

共通語だと「違うか?」・「違わない?」といった感じになるのであろうか。セットで使うと人を口で追い込む時の常套句としての効能がある。

念を押す感じの「そうだろ?」という意味。違うと言うのなら反論してみろという勢いの言葉。

「違うか?違わないだろ?」の略形と想像されるが略さず通しで言うとなると「違うだ?違わんらあ?」となることが多い。

関東系では「違うか?」関西系だと「ちゃうかあ?」とかになるのであろうか、「か」の部分が遠州では「だ」になっているのが特徴であろう。

例文

「さっきいから聞いてりゃおめえ自分の勝手ばっかいってるらあ。違うだ?」

  (さっきから聞いてりゃお前自分の都合ばかり言ってるじゃないか。そうじゃないのか?)

「自分だってそうじゃん。人のことゆえるだけ?」

  (自分だってそうじゃないか。人のこと言えるのか。)

「馬鹿こいちゃかんて。これわしんのだけどおんしゃ人んのじゃんかあ。借りもんぞんざいに使ってええと思ってるだか。違うだ?違わんらあ。」

  (何言ってんだ。これはオレのだけどお前のは人のものじゃないか。借り物を粗末に扱っていいと思ってるのか。俺の言ってることおかしいか?おかしくないだろ?)

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ちいと

ちょっと・ちょいととかいう意味。関東系というか江戸の時代劇に出てきそうな表現であるが遠州ではまだ普通に使われている。逆に遠州では「ちょいと」はあまり使わない傾向にあると思われる。

「ちっと」という表現も同じ頻度で使われるが意味的には違いが殆どなく使う人の感性の問題であろう。多少「ちいと」という方が間延びした印象を受けるのでのんびりした感じになり「ちっと」の方がそそくさとした気ぜわし感がある。

他にも「ちびっと」・「ちょびっと」という使い方もあるがこれを混ぜて比較するとややこしくなるので省略する。

例文

「ちいと出かけてくるでねえ。」

「どこ行くよを。」

「すぐ帰ってくるで。めしのこいといてよー。」

「待ちゃへんでねえ。」

「待たんくてもええけどのこいといてよを。」

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っちゃあ

「それを言っちゃあおしめえよ。」の名台詞があるくらいだから特に遠州弁だと言うことは無いのだが。

「~しては」とかいう風に訳せばいいのだろうか。「~してしまっては」という使い方もあるか。

「いっちゃあ」だと「行っては」とか「言っては」とかになる。

「いっちゃ」と「いっちゃあ」は微妙に違う。「あ」が入るとおいおいというニュアンスが加味される感じになるのだろうか。

ラムちゃんでお馴染みの「~だっちゃ」ではない。

もうニュアンス勝負なので細かい例文連ねて雰囲気を掴んで貰えば

「いろんな店屋行っちゃあ買いもしんにぶーたれてるもんで出入り禁止だらけでえ。」

  (色んなお店に行ってはいつも買わないのに文句つけてたから出入り禁止だらけだよ。)

「食っちゃあ寝え食っちゃあ寝でほんとしょんない。」

  (食べては寝て、食べては寝ての繰り返しでだらしない。)

「買う気あるっちゃああるだけえが金足らんだよ。」

  (買う気があると言えばあるんだけどお金が足りないんだ。)

例えば和彦という人の愛称を「かっちゃあ」という場合の「っちゃあ」は別物。共通語だと「かっちゃん」になるのであろうか。

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ちゃんとしんとかん

「ちゃんとしないといけない」という意味。んが連発されるので言い切ってるみたいで小気味いい感じになる。

ちなみに遠州人が心地いいと感じる表現で

「ちゃっと帰って掃除しんとかんで駄目。」

という「っ」と「ん」が多発するとなんか勢いが出て心地いい。

例文

「あんたねえはあええ歳んなるだでえ、なんしょちゃんとしんとかんだにい。」

  (もういい歳になるんだからとにかくちゃんとしなさいよ。)

「いらんこんじゃん。だいたいがなにんちゃんとしてんっつうよを。」

  (余計なお世話。そもそもどこがちゃんとしてないっていうのよ。)

「そうゆうぞんざいなものいいんとかもそうだけどいつまでもひとりでおるっつうのとかだよ。」

  (そういう口の利き方を知らないってのもそうだけどいつまでもひとりでいるってところとかだよ。)

「いいじゃん別にい。迷惑かけちゃいんだでえ。」

  (いいでしょ別に迷惑掛けてるわけじゃないんだから。)

「あんたねえ親戚衆集まると『まだ片付かんだか?』って必ずゆわれる身にもなってみい。」

「いわしときゃいいじゃん関係ないだで。」

「こんどをあんたあ出てよ法事。そうすりゃわしにがんこ迷惑掛けてるっつうのわかるでえ。」

「いやだよを。なんで出にゃかんよを。自分出たかないもんでそんなことゆうだらあ。」

「あんたねえ。挨拶もでけんようじゃホントしょおもないだにい。ホントそれこそちゃんとしんとかんて。」

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ちょうらい

頂戴(ちょうだい)のおちゃらけ言葉。

遠州弁でもなんでもない全国的な表現と思われるが家族間とかでは親愛の表現として子供が使うことが多いので記載。

ええ歳こいた衆が使うとさすがに引く。引くが使う時もある。

「くらはい」とセットで使うとお得。お返しに「くらっせー」という返事が返ってくるおまけがつくことが多い。

例文

「たんとくれたで、ちっと分けて貰ってもええ?」

  (一杯頂いたから少し分けて貰っていいかなあ。)

「ええよ。」

「自分 勝手にやってもいい?」

  (自分が分けてもいいかなあ。)

「今手え離せんでそうしてちょうらい。」

  (今手が離せないからそうして。)

「じゃあ皿貸してくらはい。」

  (それじゃあお皿貸してね。)

「ゆっとっけどまるさらはいやだにい。」

  (言っておくけど全部は厭だからね。)

「やだやあ。そんなこん する訳ないじゃん。」

  (も-そんな事する訳ないでしょ。)

「じゃ まかいたでやってくらっせー。」

  (なら任したからどうぞ。)

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ちんちん

これだけだと大抵はお湯が沸騰してる状態を表わすことが多い。どちらかというと適温を越えて沸き過ぎというニュアンスにとれる。

しかしながら使い方は幅広く「鉄板はあちんちん」となれば「鉄板はもう十分あったまってる」・「雨漏り直いたいだがトタンちんちんで足降ろせやせん」(雨漏り直したいんだけどトタン屋根が日に焼けて熱くて足踏み入れられない)という風にお湯に限ったものではない。

とにかく熱せられてる様を表現する言葉である。だからといって「かっかする」を「ちんちんする」とは言わない。感情表現としては使われない。

この表現については名古屋でも使われているらしく特に遠州固有種の方言ということではなさそうである。

例えで言うと共通語の「それだと凄く熱くなり過ぎてしまうから駄目なんだよ。」というのを

名古屋だと多分「ほいじゃ でえりゃあ ちんちんになってまうで かんわあ。」かな?違ってたらごめんなさい素人なので。

遠州弁では「そんだと 馬鹿がんこ ちんちんに なるもんで かんだよ。」となる。

共通語にはこういう意味使いは存在してないらしく「ちんちん」というとひとつの意味しかなく、聞くとドキッとするらしいが発音というかイントネーションが異なるので混同することは我々現地人ではあり得ない。したがってなんら恥じることなく男女共に使う表現である。

例文(今回はリアルにありそうな会話ではなく完全に創作のおちゃらけ)

「知ってる?ド○フのコントでうんこちんちんっての。」

「知ってるよ。それんなに?」

「あれさあ、うんこがちんちんってこんだで要はやけくそっつう意味だらぁ?」

「違うらあいくらなんでもぉ。」

「じゃあちんちんってなによを。」

「そんなん知らすけえ。」

「知らんで笑ってるだか?」

「いいじゃん別にい。」

説明しよう。うんこがちんちん。つまり糞が熱せられている。ということは糞が焼けてるということだから「やけくそ」になるという論理である。もちろんこれは冗句であって遠州人が実際のコント見てそう思ってた訳ではない。

ちなみにどういう意味なのか未だに知らない謎の言葉である。

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ちゃちゃっととちゃっちゃとの使い分けその2

どうもこの二つの使い分けが分かりにくいという事で。あくまで遠州弁における使い分けなので共通語的使い分けではないやもしれぬのでそこはご注意を。

まあ要は「さっさと」と「ささっと」との違いみたいなもんであろうが。

「ちゃっちゃと帰る」(とっとと帰る)

残業やらされちゃかなわんでうだうだせんとちゃっちゃと帰る。

(残業やらされたらかなわないから早々に退散する。)

「ちゃちゃっと帰る」(急いで帰る)

今日見たい番組あるから間に合うようにちゃちゃっと帰る。

(今日は見たい番組があるから間に合うように速攻で帰る。)

「ちゃっちゃと料理せよ」(早く料理しろよ)

くっちゃべってんでちゃっちゃと料理せよやあ

(話に夢中になってないで料理しなさいよ。)

「ちゃちゃっと料理する」(ささっと料理する)

遅くなってごめんねえ。今ちゃちゃっと料理するでねえ。

(遅くなってごめんね。急いで料理の支度するからね。)

「ちゃっちゃと行ってちゃちゃっと帰ってこい」(とっとと行ってそそくさと帰ってくこい)

「ちゃちゃっと行ってちゃっちゃと帰ってくる」(今直ぐ行って体のいいとこで帰ってくる)

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ちょんちょん

柏木とかを続けて打つ音、「ちょん」とほぼ同じ?これは共通語での意味。辞書に記載されてる意味だが遠州ではこういう意味合いでは使われていない。

遠州弁だとイーブンイーブンという意味。プラマイゼロ・どっちも同じ・どっこいどっこいということであろうか。

ただし「どっこいどっこい」のように「どっちでも同じだから(変わらない)から」というニュアンスは比較的薄く、「なんとか帳面合わせた」みたいな印象が強くなる。

「あいこ」という意味でもあるので、共通語だと「とんとん」ということになると思われる。なんで「と」が「ちょ」になるのかは定かではないが、別の考えとしては遠州弁の「ちょん」というのが「きりのいい」とか「ちょうどのところ」とかいう意味を持つ使い方もあるのでそれが互いに「ちょん」になるということで「ちょんちょん」=「同じにした」という表現になったとも考えられるが説得力に乏しいのが無念。

それでも「とんとん」だと結果そうなったみたいな勢いになるが「ちょんちょん」だとそうなるようにしたみたいな勢いの違いは存在する。

他の意味使いもあるらしいのだが、私的にはこういう使い方しかしていない。

例文

「きんのうの休みなにしてたよー。」

  (昨日の休みは何してたの?)

「パッチーいっとった。」

  (パチンコに行ってた。)

「どうだったでえ。」

「結局ちょんちょんだの。くたびれ損だあれ。」

  (まあ結局は勝ち負けとんとんかな。くたびれ損だったよ。)

「ほんたあけちょんけちょんじゃなかっただけえ?」

  (ホントは負けっぱなしなんじゃなかったの?)

「そんなとこ見栄張るかあ普通。張らんらあ。」

「わからんよを。おっかさに損こいたとかいったらもう行っちゃかんつわれるもんでかもしれんじゃん。」

  (いやあどうかな?嫁さんに損したとかいったらもう行くなって言われるかもしれないから黙ってんじゃないの?)

「ホントだってえ嘘じゃないって。勘弁してやあ。」

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