1-2・遠州弁く行

くついた

「靴下」のこと。「した」を「いた」と訛るだけの話しであるがこのように変化するのは「くつした」だけで特異な訛りであろう

例えば「割り下」を「わりいた」とは言わないし「軒下」も「のきいた」とは言わない。

なぜ靴下だけが「くついた」になるのか不思議である。どれくらいの範囲でこういう言い方をするのかは不明だがとにかく幼児言葉っぽいが普通に使われるというのは遠州くらいなのであろうか

遠州独特ではないであろうがどれくらいの地域がこの表現をするのかよく分からない。幼児言葉としては広く使われているようではあるが。

例文

「やあくついたどこやっただあ。」

  (ねえ靴下出してくれない。)

「いつもんとこに入ってるらあ。」

  (いつもの所に入ってるでしょ。)

「葬式行くに白はまずいらあ。黒のが欲しいだよ。」

  (葬式に行くのに白はまずいだろうに。黒の靴下を探してるの。)

「だったら礼服といっしょくたあでタンスにつるくいてある筈だで見てみいにい。あっただら礼服は?」

  (礼服はあったんでしょ?礼服とセットでタンスの中に吊るしてある筈だから見てみなよ。)

「いや先くついた履かすと思って礼服見ちゃいんだわあ。」

  (いや、先に靴下履こうと思って礼服まだ探してないんだ。)

「んじゃあ見てみいある筈だで。」

  (それなら見てみなよある筈だから。)

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くそみそ

糞も味噌も混ぜこぜということであり、共通語では二通りの意味使いがあって、価値のある物とない物を区別なく扱うという意味使いと、相手をひどくやりこめる様子というのがあるらしい。共通語では主に「珠玉混合」みたいな意味合いで前者が使われるのだろうか。

しかしながら遠州ではごちゃ混ぜとかいう場合には「いっしょくたあ」という表現を使うので、遠州弁における「くそみそ」は、けちょんけちょん・散々・ぼろくそとかいう意味に普通は解釈される。

「くそみそにするなやあ」だと共通語だと「一緒にするなよ」とかになるのだろうか。個人差はもちろんあるが遠州弁では「酷い扱いするなよ」という意味になる。

「くそみそにやられた」は「けちょんけちょんにやられた」と言う意味であるがこれは共通語でもそうであろうか。遠州弁はこういう使い方が殆どということである。

例文

「どうだった面接わあ。」

  (どうだった?面接の具合は。)

「はあくそみそでえ。」

  (もうぼろくそだよ。)

「なんでえなにがよを。」

  (なんだよ上手くいかなかったのか。)

「舞い上がっちゃってなにしてきたか記憶すらない。」

  (舞い上がっちゃって何をしてきたのか記憶が飛んでる。)

「なんも覚えちゃいんだか?」

  (なにも覚えていないのかい。)

「帰りしなに顔みてたらぶすくれとったで、はあ観念したわ。」

  (帰り際に顔色伺ったら仏頂面してたからもう駄目だ。)

「何ゆっただかいねえ。」

  (何言ったんだろうねえ。)

「こっちん知りたいわあ。」

  (こっちが知りたいよ。)

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くさる(で、早口言葉)

「~やがる」という訳でいいのか微妙だが。

「しくさる」なら「しやがる」。

「やりくさる」なら「やりやがる」。

言葉遊びみたいだが「くさりくさる」(腐りやがる)という表現もあり得る。

もっと図に乗って「くさりくさりくさる」(鎖が腐りやがる)。

より調子こいて「くさいくさりくさりくさる」(臭い鎖腐りくさる)。もっともこういう場合は「どんぐさい鎖ん腐ってけつかる」・「どぐさあ鎖い腐りくさる」などという言い方をする方が多いので机上の表現だが。

机上の空論を飛躍させて早口言葉化すると

「くさやのくさやでくさくくさりくさりくさるでくさびでとめくされ」(草屋のくさやで臭く鎖腐りくさるで楔で止めくされ)

意味は「草ぶきの家にあるくさやの匂いが臭くて鎖が腐りやがるんで楔(くさび)して止めやがれ。」

もちろん臭いで鎖が腐る訳はないし楔で止まるかよという意味不明の部分があるのだがあくまで語呂遊びということで勘弁してくんなまし。

というかこれ(くさる)が遠州弁かどうかは非常に疑わしいのではあるが。早口言葉のアイデアが出たし実際使われる表現なので方言として記載。

「けつかる」と「くさる」の使い分けはいまいち不明。ニュアンス的には五十歩百歩のような気がしてるがどうでしょう。「けつかる」は関西風で「くさる」が関東風という感じもあるか。遠州ではどっちも使う。

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くらはい

くださいと言う意味のおちゃらけ言葉。方言でも何でもないのだが子供用語に留まらず家族とか仲間内の親愛表現としても使うこともあるので記載しても撥は当たるまいと思って。

「くらっせー」というどこぞの方言からの表現も使われる。

純に遠州弁だと「くんない」・「くりょお」・「くれやあ」とかであろうか。

「くれづら」・「くれだら」という言い方は存在しない。むしろ「くれだら」だと「くださいでしょ」という注意(訂正)するような意味になるのでむやみやたらに「づら・だら」つければ遠州弁となるとは決して思わないように。

例文

「ごはんくらはい。」

「あんたまだ5時回ったばっかじゃんかあ。」

「早めにしてくらはい。」

「買いもんも行っちゃいんだですぐでけすかあ。我慢しなさい。」

「ほいじゃつなぎでお菓子くらっせー。」

「ダメん決まってるじゃん。なにゆってるよぉもー。」

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くりょ・くんりょ・くりょう・くり

「そうしてください」を遠州弁的表現で言うと

「そうしてくりょ」(そうしてくれ)

「そうしてくんりょ」(そうして欲しい)

「そうしてくりょう」(そうしてください)

「そうしちくりい」(そうしてっ)

とかのニュアンス分けして表現することが出来る。「しちくりい」についてはおふざけ言葉なので方言と呼べる範疇かどうか疑わしいが一応使ってるので記載。

他にも「つかあさい」・「やあ」とかも使う。一番丁寧?な部類に属するのは

「そうしてくれると嬉しいだけどやあ」・「~助かるだけどやあ」

とかがつくことであろうか。

例文

「腹ん減ったでなんか作っちくりい。」

「自分で湯う沸かいてカップラーメン喰やいいじゃん。」

「んなこといわんとお。作ってくんりょ。」

「今日はなんもせんって決めただもん。」

「そういわすとお。作ってやあ。」

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くさるけに

沢山(たくさん)と言う意味。直訳すると「腐るくらいに」。

腐らせてしまうほど沢山在るからと言っている。

普通は持ってても使い切れないから分けてあげるよとかいう表現での使い道である。

「くさるけにあるけどくれたらん」(沢山あるけどあげないよ)

ともなればケチの度を越えたしみったれという事になる。

「くさるけにあるけどあんたにゃあくれん」(たくさんあるけど貴方にはあげない)

となれば厭味みたいなもんであんたは嫌いだという誇張した表現になる。

例文

「あんたんとこの庭の柿ずいぶん生ってるねえ。」

「くさるけにあるでよかったらもってってやあ。」

「いやあ悪いよお。そんなつもりで言ったじゃないだにい。」

「ホントうちじゃ余らすだけだけ。もってってくれると有難いだよお。」

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くんさい

くださいと言う意味。あまり使う表現ではないのでどこかしらの方言が混ざってきているやもしれぬ言葉の怖れあり。どこの方言なんだろう。でもたまあにでも使ってるから記載。

「そうしてください」を「そうしてつかあさい」というようなもので

「これください」を「これくんさい」と言う風に使う。

ただし馴れ馴れしいと言うか厚かましくなるニュアンスになるので「ください」=「くんさい」かどうかは幾分怪しい。あくまで意味が同じであるだけのことであろうか。

どちらかといえば「くれないかい・ちょうだい」と言う感じの方が近いか。いやさ、もっとふざけてると思われるな言われた方は。

例文

「じゃあわしん先い行くでえ。」

  (それじゃあ私は先に行くから。)

「うん。そうしてくんさい。」

  (うん、そうしてくらはい。)

「おんしゃ後からくるだら。」

  (君は後から来るんだろ。)

「行けたら行くわあ。」

  (行けたら行くね。)

「てんめえ、ぶっさぐる。」

  (お前なあ殴るぞ。)

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くっちゃぶい

くそ寒いの変形。「くっちゃぶう」という言い方もあり。

これが方言かどうか非常に疑わしい俗語表現であるが、遠州内なら結構通じるので一応記載。

くそをつけるくらいだから寒さに癪が触る勢いの表現である。

似たような表現で「くっちゃべる」(雑談してる)とかがあるがこれが「くそしゃべる」の変形かどうかは疑問ではある。

例文

「う~今朝あ馬鹿くっちゃぶいやあ。」

  (う~今朝はスゲエくそ寒いなあ。)

「ホントだの。きんのう結構ぬくとかっただにねえ。」

  (そうだね。昨日が結構暖かかったのにねえ。)

「こんなだと遊びい行くにもしんどいやあ。」

  (これだけ寒いと遊びに出るのもしんどいよお。)

「とかこいてきちんと来てるじゃんかあ。」

  (そう言ってちゃんと来てるじゃないか。)

「まあの。で、どこ行かす?」

  (まあね。それでどこ行こうか。)

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くっちゃんくっちゃん

支離滅裂な様を表わす。共通語だと「くちゃくちゃ・わやくちゃ」になるのであろうか。「くちゃくちゃ」よりも滅裂度が高い。

「くっちゃくちゃ」という言い方もあり意味的にはほぼ同じであろうか。

「はあもうくっちゃんくっちゃんでえ。」

  (もう支離滅裂だよ。)

「ぐっちゃんぐっちゃん」だとドロドロ感が含まれることになる。

例文

「状況めえきたけど。どうなってるだや。」

「はあもうくっちゃんくっちゃんでえ。」

「なにしたよお。」

「知らんわあ。どこんどうのっつうレベルじゃねえわ。」

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くっでね

くるからねと言う意味。

「ちゃっと行って帰ってくっでね。」(直ぐ行って戻ってくるからね。)

ちなみに

「ちゃっと持ってくでね。」

だと「直ぐ持って行くからね。」と言うことになる。

「ちゃっと持ってくっでね。」

だと「直ぐ持ってくるからね。」となる。

「買ってくでねえ。」(買っていくからね。)

「買ってくっでねえ。」(買ってくるからね。)

例文

「あれえ。醤油切らいてるじゃん。ちゃっと買ってくっでえ鍋の火い見といてやあ。」

「火い止めてからいきゃいいじゃん。」

「あんた暇してるだでいいじゃん。頼むにい。」

「焦がいても知らんでねえ。」

「ほいたらおかず無しんなるだけでえ。ええだけ?」

「・・・いってらっさい。」

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