1-2・遠州弁き行

きよい

「よい」の記事でも書いた「着よい」(着易い)。

聞き様によっては「清い」とも聞こえる訳でこんがらがるボケもありうるなと。

例文

「これがんこ着よいで着てみい。」

  (これとても着易いから着てみなよ。)

「どこが頑固に清いんですか?」

「どこがって。変な事ゆう人だやあ。なんしょ着てみいにそうすりゃすぐ分かるでえ。」

  (どこがって。可笑しな事言う人だねえ。とにかく着てみなよそうすれば実感出来るから。)

「・・・・着易いですけど、でも特に心が洗われるとかにはならないですけど・・・。」

「なにゆってるよをあんた。変わった人だねえ服着て安気になる人なんて普通いんらあ。」

  (あなた何言ってるの。変わってる人だねえ服着て安らかになる人なんて普通いないでしょう。)

「暗鬼ってそりゃ疑い深くなんかなることはないですけど。」

「ちんぷんかんぷんな講釈垂れてると嫌われるにい。」

  (意味不明に理屈ばってたら人付き合い大変だよ。)

「はあそうですか・・・。」

「はあってなにが?」

  (もうって何が?)

「え?」

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きちきち その2

別の記事に於いて「きつきつ」との比較で書いたが、別の用途があったので追記。

「きちきちやらんと気い済まん」

訳すと「きっちりやらなければ気が済まない」。

つまり意味として「きっちり」・「精一杯」・「きちんと」とかいったニュアンスで使われる場合が遠州弁にはあるということである。推測だが「きちんきちん」の省略された表現かと想像される。

「しゃきしゃき」や「はきはき」というテンポよくとかいうニュアンスではなく「手を緩めない」という意味合いが強い。

似たような表現で「はしはし」というのもあるが、比較すると「はしはし」は要領よくの意味合いが強く「きちきち」はより精確にという趣を感じる。

例文

「あの人と仕事すると疲れるやあ。」

  (あの人と組むと疲れるんだよね。)

「なんで?」

  (どうして?)

「あの人どこかしら手え抜くだいね。わしなんかきちきちやらんと気い済まんたちだもんでやっきりこくだよ。」

  (あの人はどこかしら手を抜くんだよね。私なんかちゃんとやらないと気が済まない性質なんでむっとくるんだよね。)

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きよる

あいつが持ってきよる・電話してきよる。

使い方としてはこうであるが、じゃあ「きよる」ってどういうニュアンスなんだと聞かれるとはたと説明に窮す。

「きてくれる」ほど丁寧(感謝)でもないし「きやがる」ほど横柄(余計な)でもなし、単に「きた」では味気ない。少なくとも上から目線と取られるので知らない人とかに使うと偉そうにと思われるので使い方には注意が必要な言葉ではある。

「来て寄る(寄こす)・拠る・因る」の短縮で「きよる」とも勘繰れるが根拠は非常に薄い与太話し。

じじばばの「この忙しいだに孫が電話してきよる。」といった表迷惑内心嬉しいみたいな使い方が多いのであろうか。

他の言い方だと「持ってこす」・「電話してこす」(~くる)・「持ってきてよこす」・「電話してよこす」(~してくる)・「持ってくらっしゃる」・「電話してくらっしゃる」(~してくれる~して頂いた)・「持ってくりゃがる」・「電話してくりゃがる」・「持ってきてけつかる」・「電話してけつかる」(~しやがって)・「持ってきてけつかりゃあがる」・「電話してけつかりゃがる」(~してきやがる)などなどがある。

ちなみに「きよる」だけだと「着よる」と「来よる」のどちらとも聞こえるのであるが今話しているのは「来よる」の方。

例文

「なんでうさぎさんあっちばっか行ってこっちこんの?」

「餌とかくれてるもんであっちい行きよるだらあ。」

「なんかくれるもんないだけ。」

「ねえの。」

「そうだ。おべんとに人参入ってたでそれくれりゃこっちきよるらあ。」

「やあばかっつらあ自分嫌いで食いたくないだけじゃんか。そんな言い訳通用しんでねえ。」

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きさる・きさらん

閉まる・閉まらんという意味。

全てのものの閉じるに使う言葉ではなく、ふた(蓋)とかごく限られたものにしか使わない言葉。蓋以外にどういうのがあるかというと・・・実は思いつかない。

ふさぐ(塞ぐ)という意味もあるなら「穴んきさらん」(穴が塞がらない)という使い方もありえるのだが正直自信なし。とりあえず蓋には間違いなく使うので「閉める」の意味は間違いない。

どういういわれでこういう表現に至ったのか不明。

「服を着せる」ように「器に蓋を着せる」から変形して「着さる」という形になったと勘繰れなくも無いがその根拠はない。

蓋はかぶせるものであり、「かぶせる」・「かぶさる」の「かぶ」が異常変異して「き」に化けて「きさる」になったという勘繰りもあり得る。もちろんこれも根拠はない。

例文

「さっきいからなにうんしょうんしょしてるよを。」

  (さっきから力(りき)入ってなにごそごそやってるの?)

「それがやあ。ふたんきさらんだよを。」

  (それがさあ。蓋が閉まらないんだよ。)

「違う奴無理していれすとしてるだらあ。」

  (違う蓋無理して入れようとしてるんじゃないの?)

「んなことあらすけえ。これでいいだ。」

  (そんなことないよ。これで合ってる。)

「でもきさらんだらあ?きさるだ?」

  (でも閉まらないんでしょ?閉まりそう?)

「おっかしいなあ。」

  (変だなあ。)

「貸してみい。・・・ってこれさあ。ふたん回すのじゃなくて上からぶっさぐる奴じゃん。」

  (貸してみなよ。・・・ってこれ、蓋を回すのじゃなくて上からポンって押し込むタイプじゃないか。)

「うわあなんでえそれ。やいやい馬鹿こいた。」

  (うわあなんだよそれ。あ~あ失敗した~。)

「よく見んもんでえ。あわっくいがあ。」

  (よく見ないからだよ。あわてもんがぁ。)

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きいな

黄色という意味。「黄色い」だと「きいない」・「黄色く」だと「きいなく」という風になる。

しかし「黄色の」は「きいないの」・「黄色で」は「きいないで」と言うので「きいない」=「黄色」ということも考えられる。まあ実際は「きいなく」は「きいないく」で「きいない」は「きいないい」が言いやすいように略された表現であろうと想像されるので「きいない」=「黄色」が正しいのであろう。

「きい」は「黄」だと分かるが「な」って何?という説明は分らないので出来ない。ちなみに「な」が付く色の表現は「黄色」しかない。

「黄な粉」というのが共通語でもあるのでもしかしたら古い日本語なのかもしれない。とはいっても遠州では「きいなこ」と言ってる訳ではなく「黄な粉」は「きなこ」である。

「黄色い色してる車」を「黄色な色してる車」という風に共通語では使うことがあるのだろうか。遠州ではある。

例文1

「手ぇみかん喰い過ぎできいなくなっちゃたよ。」

「ばかばか喰うもんでえ。なくなりゃせんだであせって喰わんだっていいじゃん。」

「ついついなあテレビとか見てると手え寂しいもんでえの。」

「だからっつって煙草吸わせやせんでねえ。」

例文2

「信号きいなかったけど急いでたもんでとんじゃかなく入ったらやあ。パトカーにとんまさった。」

  (信号黄色になってたけど急いでたから構わず進入したら、パトカーに捕まった。)

「いくらしたよを。」

  (反則金いくらしたの?)

「がんこ。懲りちゃうやあ。」

  (そりゃもうたっぷり。参っちゃうよ。)

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ぎゃーつく

広範囲で使われる表現で特に遠州弁ということではないのだろうが。

一般的には「ぎゃーつくぎゃーつく」と繰り返す言い方で使われる地域が多いらしく、遠州は「ぎゃーつく」と繰り返さないことが多いのが特徴といえるのかもしれない。ただ単に略したのが定着したということも考えられるが。

意味的には「わめく」ということであろう。以前記事で「ひゃあひゃあ・ぎゃーつく」を書いたが、遠州ではランクというか強弱で言い方を変えて「わめく」の表現をしているということであろうか。

「ぎゃーつく」だと「ほざく」がつくことが多く。「ひゃあひゃあ」だと「言う・こく」がつくというように、「ぎゃーつく」の方がわめき度が高い印象がある。

大雑把に訳すと「口答えする・批判非難する」というニュアンスであろうか。

例文

「も~。ぎゃーつくほざくな。うっとおしい。」

  (も~きゃんきゃん喚くなうっとおしい。)

「こんだけゆったってきかんならわし帰るでねえ。」

  (これだけ言っても聞かないなら帰るからね。)

とまあ強硬な言い合いになる。ちなみに「ひゃあひゃあ」にすると

「も~。ひゃあひゃあ言わんで。うざったい。」

  (も~いちいち言うな気が散る。)

「こんだけゆわにゃあんたわかりもしんに。」

  (口酸っぱくして言わないと分からないでしょあなたは。)

ってな感じできつさ(対決姿勢)は薄れる。

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きつきつときちきち

どちらも共通語であろうが、ニュアンスというか使い方が異なるかもと思えたので記載。ちなみにネットや辞書で調べると「きちきち」はあったが「きつきつ」を説明するところだと全く違う用途だった。

あくまで遠州弁の中での一例であり方言としてこうであるという決めつけではないので誤解の無き様に。

「きつきつ」

「ぱんぱん」と同様サイズの合わない小さい服とかを着た時の印象・感想を表現する場合に使う言葉。着るだけではなく箱に詰めるとか言う場合でも使われて、入れ物・器と詰める着る被せる等のものが適度ではないような場合に使われる。入りきらないのではなくなんとか隙間無く入る状態。

「きちきち」

使い方が曖昧で「きつきつ」と同じような使い方をする場合もあるが、どちらかというと中身が器より多いとか成長してとか膨らんだりして外の器に入りきらなくなるような状態を示すというニュアンスを多く含む感じになる。

「きつきつ」は中身の側からの言葉であり、「「きちきち」は器の側からの言葉という風にもまとめられるかもしれない。体とズボンの関係で言うと体からすれば「きつきつ」ズボンに言わせれば「きちきち」といった関係か。

繰り返すが私見であってこれが正しいと胸を張れる根拠は無い。

例文

「はあこのズボンきつきつだよお。」

  (もうこのズボンだとパンパンだよ。)

「はあちんちくりんだかいねえ。きちきちにめえるもんね。」

  (もうサイズ合わなくなったのかねえ。ぎゅうぎゅうに見えるものね。)

「だで新しいの買うかあ。」

  (だから新しいの買おうよ。)

「今はダイエットっつう手もあるだにい。買わんで済むし、あんた痩せない。そうすりゃいいじゃん。」

  (今はダイエットっていう手段もあるんだから。そうすれば買わないで済むから痩せなさいよ。それがいいよ。)

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きしょい

気色悪いと言う意味。遠州の方言ではなく最近の造語若しくは他の地域からの流入ではあろうが、遠州弁の「ぶしょい」(ぶしょったい)と並びで語呂が合うので遠州では流行としてでなく残りそうな言葉かもと思って記載。

気色悪いを調べると「不快」ということであるらしいが、私が受ける言葉の印象は、服とか行動などが似合わないとか不自然だとかわざとらしいとか云う風に受ける。貴方が意図しているほどの効果が窺い知れずむしろ作為的に受け取れてなんだかなあという感じである。ま、下心(魂胆)見え見えということである。

例文

「どうでえこの服。」

「なんかきしょい。」

「どこがよー。」

「鼻の下伸びてるの直ぐ分かる。」

「なにがよー。」

「誰ん見たってなにしい行くだか直ぐ分かる。」

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きせる

洋服を着せるの「着せる」ではない。無賃乗車の「キセル」でもない。

蓋を被せると言う意味。漢字でどう書くかは知らない。

例文1

「のりしっけちゃうでちゃっとふたきせて。」

  (海苔が湿るから直ぐ蓋をして。)

例文2

「あれえ出んよお。どーして?」

「そりゃあふたきせたままだもん。出る訳ないらあ。」

車にカバーとかを被せるような場合には「車にカバーきせて」とはあまり言わないので、単純に被せる・あまり大きなものなどには使われないと思われる。蓋に限定されるかどうかは不明。

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きぜわしない

気忙しい。せかされる・落ち着きがないといったバタバタした感じをたしなめる際に用いる言葉。

「気忙しい」は辞書にも載っているので方言ではないが、「きぜわしない」となると方言になるらしい。あまりにも普通に使っているので全国共通だとばかり思っていた。

解釈としては、気忙しいが無いということではなく、「気忙しいなあ」の「なあ」が「ない」に変化したもの、「気忙しいでやめない」が省略されたもの、など憶測がいくつか考えられる。なにが正解なのかは無論知らない。

おそらくは、せわしない(忙しない)という表現があるように(せわしいの強調形だそうな)昔はきぜわしないも使われていたものが使われなくなって遠州には何故か残っていたと云う考えが一番適切かもしれない。

意味合いとしては気ばかり急いていて実になることをしていない様を言うことが多い。つまり無駄にあたふたしてる様であって単に忙しく立ち回っている様に対しては使わないことが多い。もちろん普段のんびりとしたところがその日に限って忙しくしてる様に対して「いつもと違うじゃないか」と思って言う場合とかもあるので一概には決め付けられないが。

例文

「さっきから出たり入ったりきぜわしない。座って待ってりゃいいじゃん。」

「いやなんかいごいとらんと落ち着かんくてやあ。」

「時間がこにゃ始まらんだで待つしかありもしんに。」

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