1-2・遠州弁せ行

ぜぜ・おぜぜ・おじぇじぇ

「銭」(ぜに)。お金の事であるが、これは遠州独特でもないし若い衆は使わないのでまあ方言というより名残りの言い回しということであろうと想像される。女性が使うことはまずない男言葉であろうか。

お金の事を口にするにおいてそこはかとなく後ろめたさというか恥じらいが籠もる印象になる。つまり訳すと「恥ずかしながらお金が・を」という感じであろうか。

露骨にお金がどうのこうのと言うに憚る時に使う照れの籠もった表現として使われることが多い。繰り返すが年寄り言葉に近いもので若い人達はまず使わないであろう。

他には「お足」という言い方もあろうが流石にこれを日常で使う人は稀というかいないだろうな多分。時代劇の中での用語か。

例文

「なに殊勝に残業してるでえ。」

  (何で殊勝に残業してんだい?)

「いんやあ。欲しいもんあるもんでおぜぜ稼がんとなっと思ってやあ。」

  (いやあちょっとね欲しいものがあるもんだからお金稼がなくちゃと思ってね。)

「何買うよを。」

  (なにを買うんだい?)

「そりゃいいとこまんじゅうでえの。」

  (そりゃあちょっと内緒だな。)

「てんめえ、ぶっさぐるぞガキじゃあるまいし。」

  (おい子供相手なみたいな口ぶりしやがってなんだよそれ。)

「嘘嘘。いやのっ。車そろそろ替えすかと思ってやあ。」

  (冗談冗談。いやね、車をそろそろ買い替えようかと思ってね。)

「そりゃそりゃ気の遠くなる話しでご苦労なこって。」

  (それはそれは気に遠くなる話しだこと。まあ頑張ってよ。)

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せんぼ

「栓」という意味。今はどちらかというと廃れつつある表現か。

方言というより「とおせんぼ」の「せんぼ」という言い方がまだ日常会話の中に遠州では残ってたということであろうか。

ちなみに「栓をする」の他の言い方では「蓋をきせる」という言い方も遠州弁にはある。

冗句の語呂遊びとしては「先方の羨望の潜望鏡をせんぼしてどんじかられる」

例文

「かあぬけるだで、飲んだら忘れんとせんぼしときなよ。」

  (炭酸が抜けちゃうから飲んだ後は栓しなさいよ。)

「まるきし飲むでせんぼしんでもいいもん。」

  (全部飲むから栓なんかしなくてもいいもん。)

「やあばかっつら。皆に回すだで自分独りで飲むじゃねえよ。」

  (ちょっとを。皆にも分けるんだから一人で飲むんじゃないの。)

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せる

「せる」は方言などでは決してないのだがその使用頻度が他の地域とは違うのが特徴かもと思って記載。それにちょっと受けるニュアンスも共通語とは異なるかも。

これが「させる」とか「やらせる」とかだとモロ共通語であるが、「貸せる」や「着せる」・「寄せる」だと遠州弁っぽくなるような気がする。

共通語の「せる」はどことなく命令というか上から目線な印象が強いが遠州弁だと上の者が下の者にといったような点では同じであるがそんな偉そうぶった印象を感じない。

「貸す」を例にすると「貸せる」は「貸す」・「貸してやる」の中間的な感覚であろうか。

話し変わるが「する」を「せる」というパターンもある。

「そうせよっつうんならそうせるけど、どうせるよを、せるだけえ。せんだけ?」

  (そうしろって言うのならそうするけどどうするんだやるのかやらないのか?)

この文章「せ」を「し」に変えても成立するかというと、「せる」は「しる」にはならないので成立しない。以下のようになる。

「そうしよっつうならそうしっけど、どうせるだあ。するだ?しんだ?」

で、「せる」を共通語に訳せとなると「する」になるんかな。そんな単純でもないような気がするけど。

話しを戻してたとえば「貸せる」。「貸す」という意味であるがそのニュアンスは微妙に貸してやるみたいな恩着せがましい(上から目線)感じが含まれる気がする。

おそらくは方言などではなく古い日本語なんだろうかな。「貸す」ではなく「貸する」という表現にした方が「貸せる」・「貸さる」に変化するのが納得いく気がする。そうすれば命令っぽい「貸せよを」という言い方も理屈は合う。

もっともサ行変格活用とかには当てはまらないんででどういう理屈だというツッコミに応酬できないが。

例文1

「財布忘れたで貸して。」

「貸せてもええけどたんとは嫌だにい。」

「がんこ貸してっつったって貸せる甲斐性ないなあ分かってるって。」

「あ。はあ貸せる気なくいた。」

「嘘嘘冗談だって。」

例文2

「なに着せる気でえ。」

「いいじゃん別にい。何着せようが勝手でしょ。」

「着せられる方ん身いなってみい。堪らんにい。」

「んなこたあねえらあ。カワイイだでいいじゃんかあ。」

「犬嫌がってるじゃん。飼い主の趣味ばっかし押し付けるなあどうかと思うやあ。」

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せっつける

せっつく(催促する)の変形バージョン。私もあまり使わない言葉なので細かいニュアンスは理解出来てないが、周りの衆が時々使っている。辞書にも載っているので方言ではなさそうだが古い言葉であるような気はしてる。

辞書によると「せっつく」は「せつく」の強調的表現で「せっつける」はその可能動詞形であると記載されている。意味がよーわからんが「押し付ける」と同じ使い方と言うことなのであろうか。しかしながら「押し付ける」だと「さっつける」という表現を思い浮かぶのは気のせいか無知のせいか。

例文に関しては私は使わない言葉なのでアイデアが浮かばない。「せっつかせる」と言う意味の遠州弁「せっつけさす・せっつかさす・せっつかす」なら理解できるのだが。共通語なら「せっついて」とかになるのかな。

冗談だが、攝津の国勤務を蹴るからせっつけるという言葉が生まれたとかいうことでは無い事だけは確かであろう。

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せすか

「どうせすか」(どうしようか)

「ころせすか」(殺せる訳無いだろう)

「やらせすか」(やらせないよ)

「こうせすか」(こうしようよ)

「せすか」の意味はこうであると一概に決め付けられない。不思議に変化する言葉である。そもそも全てが同じ言葉なのかさえよく理解出来ていない。

おおまかに分類すれば、打ち消しの言葉と意思を表わす言葉の二種類であろうか。

変形というか遠州弁では「せ」と「し」が混在してどちらでも同じ意味になり使い方は個人の好き好きというのがあるが、「しすか」というと例の場合「どうしすか」・「こうしすか」は存在するが「ころしすか」・「やらしすか」という表現は存在しない。

例文

「通れやせんじゃん。どうせすかねえ。思い切って植わっとる木ぃぶっこ抜かすか?」

  (通れないよどうしよう。思い切って植えてある木を抜いちゃおうか。)

「やあ馬鹿っつらあ。そんなこんやらせすかぁやあ。後どうしてくれるでえ。」

  (なに言ってんだよ。そんなことやらせないぞ。後のこと考えてるのか。)

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せえ

単体だとなんのこっちゃということになるのだが

「おんしゃあなにせえ来ただあ。」となると判り易いと思われる「せえ」。

文章を訳すと「君はなにをしに来たんだ。」となる。関西でも使われる表現であろうから遠州独特と言う訳ではない。

女性言葉だと「なによーあんたあなにせえ来たよー。」

他には「しい」・「せい」という表現もあり意味的な違いはない。

例文

「ほいじゃ、始めっか。」

  (じゃあ始めようか。)

「そうだの、始めまいか。」

  (そうですね、始めましょう。)

「軍手しんでええだか?」

  (軍手しなくてもいいのかい?)

「忘れた。」

  (忘れました。)

「(自分の分の)材料わあ?持ってきただか?」

  (材料はどこ?持って来たの?)

「持ってこんかった。」

  (持って来ませんでした。)

「やあ、おんしゃあなにせえ来ただあ。ヤル気あんだか?」

  (おいちょっとぉ。君何をしに来たんだい?ヤル気あるの?)

「ん~。よー知らんだよぉ。行けっつわれたもんで来ただけだもんで。」

  (えーとですね。それが良く分かってないんです。行けと言われたので来ただけです。)

「馬鹿っつらあ。てんだう気ぃないんならいんくてもいいわ。」

  (おいおい、手伝う気がないのならいなくてもいいぞ。)

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せんひき

線引き。定規のことであるが、遠州弁だなんて、検索してて初めて知った。こういう自覚の無い方言がくさるけにある癖して、自分のよそいきの言葉は共通語をしゃべってると思ってるのはとんでもない錯覚こいてるとしか言いようが無い。

「お里が知れる」という言葉があるが他所の衆から見ればバレバレの田舎もんにきちんと映ってるんだらなぁ。最近遠州弁のネタが絞り出ないと思ってたけど、ホントはゴロゴロそこらじゅうに転がってるんだ。

しゃあけど どっちかつったら あれだにぃ、意識して遠州弁使うとあれだね、ワザとらしくなるっつーか そんなこん 言いもしんにぃ って物言いになっちゃうだよ。だからっつって無意識こいてりゃあ なにん方言だか気づきゃしんもんで どーすりゃええだっつーこんに なる訳よお。

ま、なんしょそこらへんの線引きはきちんとつけんと前に進まんでねえ。

で、「線引き」であるが、棒状の定規を指す。三角定規を「三角せんひき」とは言わない。T定規についても「Tせんひき」とは言わないが「図面描くときのせんひき」と言う場合はある。

裁縫用の定規は「ものさし」と普通に言うので「せんひき」はあくまでも学校で使うような定規のことを指す。

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