1-2・遠州弁す行

すみっちょ

「すみっこ」の訛った表現?これが方言で、ましてや遠州弁かどうかは非常に疑わしいところであるが

イントネーションは「す」に置く言い方と「み」に置く言い方の二種類を耳にする。遠州弁的には「す」に置く方がらしいのであろうか。

端(はじ)とか角(かど)とか言う意味では「くろ」(畔)を使うことが多くどう使い分けしてるのかという説明はしにくいのであるが、「豆腐の角に頭云々」を「豆腐の畔に頭云々」と言い換えは出来るが「豆腐のすみっちょに云々」という言い換えはない。

「引き出しのすみっこ」を「引き出しの畔」・「引き出しのすみっちょ」と言うことは出来る。

例文

「線引きかしょう。」

  (定規貸して。)

「そりゃいいだあ、どこいっただいやあ。」

  (貸すのはいいけどどこにいっちゃったのかなあ。)

「机の引き出しのすみっちょとかにしまい忘れちゃいんだ?」

  (机の引き出しのすみっことかにしまい忘れたんじゃないの?)

「と思って見てるだけどないだよを。」

  (そう思って探してるんだけど無いんだ。)

「あ、わしの引き出しにあった。だでいいやあ。」

  (あれ?自分の引き出しにあった。だから借りなくてもいいや。)

「ちょい待てやあ。それわしんだらあ。」

  (ちょっと待てよそれ俺んのだろ。)

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ずいぶん

「随分」。辞書によると

普通の程度を越える様子。「随分な」だとその意味は、相手のひどい態度を責める様子。

となっている。

遠州弁における「ずいぶん」は

「そりゃまたずいぶんじゃん」(ひどい事してくれるよな)

「ずいぶんな物言いじゃん」(なんていう事言うんだ)

「ずいぶんな事してくれるじゃん」(ひどい・余計な事をしてくれて迷惑)

「ずいぶんだやあ」(ひどいなあ)

といった「随分な」という「ひどい」という意味の使い方が殆どで、普通の程度を越える様子という共通語的使い方には「がんこ」・「どえらい」・「ど」・ばか」・「相当」とかを使うので共通語と遠州弁ではそのニュアンスが微妙に異なるような気がする。

例文

「あれ?わしのわ?」

  (あれ?俺の分はないの?)

「買っちゃいんよ。」

  (買ってないよ。)

「なんでえ随分じゃん。」

  (なんだよ冷たいなあ。)

「だって欲しいっつわんかったじゃん。」

  (だって欲しいって言わなかったじゃないか。)

「そりゃゆっちゃあいんけどそんくらい気い利かすらあ普通。」

  (そりゃあ言ってなかったけど普通は気を利かせるだろ。)

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ずいぶんじゃん

「酷いじゃないか」・「なんでわしばっか」・「随分じゃないか」・「おいおい勘弁しろよ」とかいった意味で使われる。

「ずいぶんじゃん」でひとつの形となっており「ずいぶん」・「ずいぶんだら」・「ずいぶんじゃんかあ」とかも使いはするが大抵は「ずいぶんじゃん」を使う場合が多い。その理由は「ずいぶんだら」などでは「まったくも~」とかいった「おいおい」感がなく単純に非難してるようなニュアンスが強くなるからであろう。

「ずいぶんじゃん」には和みを含んだニュアンスがこもることが多いので場の空気を壊すことが少ないためと想像される。少なくとも怒ってるイメージはない。

例文

「明日の会議での発表まかいたでねえ。」

「なによをずいぶんじゃん。自分わあ。」

「わしけえ?わし見てるだけ。なんか問題でも?」

「まあええよ別に。そんかわしあることないことぶちまけちゃるでえ。」

「屁とも思わんわあ。自分の首絞めるだけだにい。」

「むかつくう。どうすりゃあ参ったといわせれるだかいやあ。」

「あれえ簡単じゃん。伊勢神宮とかに連れてってくれりゃあ参ったっつうにい。」

「・・・・・」

「それか茂さぁんとこの息子今何年生って聞かれりゃ高3って言うに。」

「首絞めちゃろかあ。」

「そんときゃ降参なんて言わすかあ。ギブっつうわあ。」

「ギブはいいぃ。」

  (ギブは言ってもいいのかあ。)

「うっ!墓穴掘ったかあ。詰めん甘かったなあやあ。」

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ずるっこい

共通語のニュアンスだと「きったねえの」(汚いの)とかいった風であろうか。

まあ「随分じゃないか」みたいなものである。

例文

「遅かったじゃん。はあ先に整理券貰っちゃったにい。」

「わしん分も貰ってくれただ?」

「余分になんかくれすかあ。自分のだけだよを。」

「ほいじゃわしも今から貰ってくるで待ってて。」

「それがのっ。はあちっと前に定員打ち止めだって。」

「うそ!随分じゃん。なんで?開始からまだそう経ってないじゃん。どばや過ぎやへん?」

「それがの人ががんこ並んで近所からクレーム出たみたいでそんで予定よりかずっか早くに整理券配り始めただあれ。」

「なに?それ。馬鹿ずるっこいじゃんかあ。」

「まあ、早起きは三文の得。っつうこんだいね。」

「う~、なんか怒れるう。」

「文句言いたいならあそこんさあの衆らさっきいからあだけまくってるで多分あんたあと同じだで行ってまざってきない。」

続きを読む "ずるっこい"

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すい

すっぱいという事。漢字にすると「酸い」。古い日本語という気がする。

古いとはいえ「酸いも甘いも噛み分ける」という表現が一般流通してるのだから当然方言ということではない。が、この古い表現を遠州ではまだ普通に使っているということであろう。

ちなみに味覚及び料理の表現で言うと一例として「しょっぱい」は「しょんばい」・「からい」。「苦い」は「にんがい」・「にがあ」。「辛い」は「ピリピリする」・「かんらい」・「かれえ」。甘いは「あんまい」・「どあま」・「あめえ」・「あまったりい」。味が薄い場合は「なんも味せん」・「うっすい」。水っぽい場合は「しゃびしゃび」。硬い場合は「こわい」。柔らかい場合は「やわい」。熱い場合は「ちんちん」。冷たい場合は「ひゃっこい」・「ちべた」・「つんめた」。とかがある。繰り返すがあくまで一例であり個人差がある。

語呂で遊ぶなら「すいすいもの」(酸い吸い物)とかで遊べる。

「かんしんしんけどついついすいすいものついかしん?」

  (感心しんけどついつい酸い吸い物追加しん?)

例文

「やあ、馬鹿酸いやあ。堪らん。」

  (うわあ物凄く酸っぱいよお。堪らない。)

「そんな酸いだか?顔ん くしゃになっとるにい。」

  (そんなに酸っぱいの?顔がくしゃってなってるよ。)

「喰ってみい。こうなるで。はあ顔なんか かまっちゃおれんに。」

  (食べてみなよこうなるから。もう表情なんか作ってられないって。)

「いやあわし、酸いの好きくないだで遠慮しとくわ。」

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すまう

住まう。多少丁寧にということであれば「住まわう」とわって入るとそれらしく聞こえてくる。

辞書とかにも載っているので「住まう」は別に方言ということではないのだがそれの変形が遠州弁っぽいかなと思って記載。

辞書だと長いこと居ついているようなニュアンスの住んでいることと説明されているが、遠州弁だと単純に住んでる・住もうとするとかいう使い方もしている。まあ大きく意味に変化がある訳ではないのだが。とにかく「住まう」という表現には住む(暮らす)にせよこれから住もうにせよ「そこで落ち着く」(安住の地)かどうかという意味が含まれてはいるであろう。

「住もうとする」という場合には「住まわす」という言い方になる。

「住んでみたい」だと「住まってみたい」。

「住んでられる」だと「住まわさってる」・「住まわんさってる」とかであろうか。

例文

「あそこみてみい。なんかどえらい斜面に家建ってるじゃんかあ。」

  (あそこ見てみなよ。凄い斜面のとこに家が建ってるよ。)

「すげえなあやあ。よを建っとるしい。」

  (凄いなあ。よく建ってられるよなあ。)

「新しい感じはせるよね。建売かいねえ。まだだんれも住まっちゃいんみたいだけえが。」

  (新築っぽい感じはするよね。建売かなあ。まだ誰も住んでいないみたいだけど。)

「あそこんさあに住まうなんちゅう人なんかおるだかいやあ。」

  (あんなとこに住もうなんて人いるのかねえ。)

「あそこんさあも一応山の手だでの。おだいさまにめえるだで根性で見栄張って住まわすだらあ。」

  (一応あそこも山の手になるからね。いいとこの人には見えるから根性で住むんじゃないの?)

「見栄も命がけだなあやあ。」

  (見栄張るのも命がけだね。)

「背伸び見栄見栄だけどね。ほんたのおだいさまならあんなとこ住まわさるこたあねえでや。」

  (背伸びしてるの見栄見栄だけどね。ホントのいいとこの人ならあんなとこに住まわれることはないからね。)

「近所付き合いでけるだでええだらあ。」

  (ご近所付き合いできるんだからそれがいいんじゃないの?)

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「す」を古語辞典で調べると使役の意。やらせると言う意味。だそうである。

現代国語の辞書だと「せる」の文語形となっている。「読ませる」・「買わせる」の「せる」。

どちらもほぼ同じの意味らしい。

しかし、遠州弁で「やらすと思っただに」・「買わすとしただに」となると「やろうと思ったのに」・「買おうとしたのに」という意味になる。

つまり遠州弁における「す」は自分に対しての場合「~しようと」という意味になる。(もちろん他人に対してなら共通語と同じ意味になるのだが。)

したがってこの表現は他の地域の人には誤解を招く表現である可能性があるということ。中途半端に使う言葉が同じでも意味が異なるというのがややこしい話である。まったく何言ってるか分からない方が諦めがつくというものであろう。

「アイス買わすと思うだけどどう?」。遠州弁では「アイスを買おうと思うけどどうかなあんたも欲しい?」という意味であるが共通語の解釈だと「アイス買わせようと思うけどどうかな?」と聞こえる訳で「おれにアイス買えって言うのか」若しくは「誰かに買わせるつもりなのか?」と反発を招きかねないということになるのであろうか。

でもまあ実のところは「~せんと欲す」とか「~せんとす」みたいな「す」(為)という文語調みたいな表現と同じなんだろうなというところであろうからまったく別の言葉ということであろうけど。

因みに共通語の「す」(せる)という使い方もするが他の言い方だと遠州では「やらせす」・「買わさす」といった「せ」か「さ」・「し」とかが入ることになる。

脱線するが「あいついかす」と言って「あいつかっこいい」(イカス)と言ってる訳ではない。「あいつに行かせる」か「あいつ行こうとしてる」のどちらかの意味になる。

例文

「あんたあ。いつまでしょろしょろしてるよを。早くしんとかんじゃん。」

  (あんたいつまでのろのろしてるの。早くしないと駄目でしょうに。)

「ひゃあひゃあゆわんだって、今いかすとしてただに。そんなことゆうもんで はあ やんなった。」

  (ぐちぐち言わなくても今行こうとしてたとこなのに。そんな事言うからもう気が削がれた。)

もちろん共通語的な意味合いでも使うということで。

例文

「誰ん行かすでえ。」

  (誰に行かせるんだい。)

「あんた行きない。」

  (あんた行ってきて。)

「わしけえ!」

  (オレかよ!)

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ずるっけえ

ずるい(狡い)なあという意味。普通は「ずっけえ」という場合の方が多いのだがこういう表現をする場合もある。

狡賢い(ずるがしこい)というニュアンスの方が強く意図的にずるいことをしてる感じになる。

「ずっけえ」は偶然とかたまたま運の違いを嘆くみたいな偶発的なものにブーたれる感じで根に持つことも無い明るい印象であるが、「ずるっけえ」は後引く陰湿さが残る印象になる。

したがって共通語に訳すと「ずっけえ」は「なんだよーそれ」、「ずるっけえ」は「きったねーなあ」という表現が近くなる。

「狡い」(こすい)との違いは「ずるっけえ」の方が多少明るく「こすい」の方がマジという感じである。

したがってずるいと本気で思ってる度でいうと

「ずっけえ」<「ずるっけえ」<「こすい」

ということになる。これに「きったね~」とか「ひどいじゃん」・「なんだよそれ」とかいった表現を含めると収拾がつかなくなるのであるがこの手の表現にはことかかないのは確かである。

「ずっこい」と「ずっけえ」とは微妙に違うのだがどう違うのかは検討中。

例文

「あれえなんで焼きそばパン食えてるよお。」

  (あれ?なんで焼きそばパン食べれてるの?)

「4時限目の体育早く終わってくれたもんで着替えんとちゃっと食堂飛んでってチャイムと共に買っただよ。」

  (4時限目の体育が早く終わってくれたもんだから着替えなしにそのまま急いで食堂に行ってチャイム鳴るのと同時に入って買った。)

「う~ずっけえ。フライングだらあ。」

「きっちし時間守ったもん。わしなんか可愛いもんだにい。○○なんか用具仕舞い行くっつって仕舞い行く前に食堂行って鳴る前にチョコとクリームのコロネ両方と焼きそばパン買ってえ、ほんでから用具仕舞い行っただもん。」

「どずるっけえらあ。なんだよそれ。あり?」

「ありじゃねえだよそれが。めっかったもんで今職員室で正座こいてる。」

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すりゃいいじゃん

すりゃいいじゃん・やりゃいいじゃん。すればいいでしょ・やればいいでしょという意味であるが、ご自由に・勝手にすれば(やれば)というニュアンスを含む表現になる。

「好きにすりゃいいじゃん」の方が露骨に勝手にすればという言い方になるが、「すりゃいいじゃん」はその緩めのニュアンスとなる。細かく訳すと「好きにすりゃいいじゃん」は「どうぞご勝手に」、「すりゃいいじゃん」は「やれば?」と言った風であろうか。「すりゃあいいじゃん」という言い方もある。

なのでこういう言われ方をされると言われた方は諸手を挙げて賛同してくれてないので気分を害することになる時がある。

した方がいいとアドバイス的に言いたい場合は「すりゃいいらあ」・「した方いいにい」とかが多く使われる。「すりゃいいじゃん」もこの用途で使われることもあるので聞き取りには注意が必要ではある。もっとも親身になってという感じではなくどうでもいいけどという感じにはなるが。聞き取り方は「やれば?」とか言う場合には「すりゃ」が強調され、した方がいいと言う場合には「いいじゃん」が強めになることが多い。

例文

「ちっと腹周り怪しいでダイエットせすかな。」

「すりゃいいじゃん。だんれも止めんで。」

「冷たいじゃん。頑張ってくらい言ってくれたっていいらあ。」

「どうせ無理だもんで言ったってしょんないじゃん。」

「あ。そうゆうこと言う。随分じゃん。」

「だって事実じゃんかあ。あんた口だけじゃんいっつも。」

「失礼しちゃうやあ。こんだ本気だでねえ。」

「はいはい。ダイエットした方いいにい。まあ、がんばいない。」

「おお、まかしょ。」

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すけんはいる

助けが入る。つまり応援(手助け)が入るという意味。

例文

「おお!随分片付いてるじゃんかあ。」

「おお!すけんはいってくれたもんで。」

「誰ん。」

  (誰が?)

「誰んて、知らん衆だけど見ちゃおれんつって。」

  (誰がって知らない人だけど見てられないって言って。)

「こんな時間にだんれもいんにい。お化けじゃないだけえ。」

「やめてくりょーきしょい。」

「しゃれんならんかあ。でもホント誰よお。ホントに知らんだか。」

「帽子かぶって懐中電灯持ってて・・・」

「って警備のおじさんじゃねえかばかっつら。帰りん礼ゆっとけよ。」

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