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*「いい」と「よい」

例えば「やりいい」という場合の「いい」。

「いい」は「易い」と言っている。

「これがんやりいいで使ってみい。」(これとてもやりやすいから使ってみなよ。)

「良い・好い」ともとれなくもないが「~し易い」と言っている。

「良い・好い」という場合には「やりよい」と発する。

つまり遠州弁においては「よい」と「いい」は使い分けられているのである。どちらもイントネーションは共通語とは異なる。「いい」の最初の「い」、「よい」の「よ」を強く発する。

どちらも訳す際は「易い」とすることが多く一見違いはないように思われるところであるが、ニュアンスとしては異なるものである。

意味的にどういう違いかというと

「持ち易い」なら「もちいい」

「持つのに良い」なら「もちよい」

「やすい」(易い)は誰にでも容易で簡単

「よい」優れている好ましい

などという違い。

つまり誰が持ってもという勢いと自分が持ってという勢いの違いである。

強引にいえば「やりいい」は誰にでも簡単、「やりよい」は自分にとっては得手であるといった感じである。

最初の例文でいうと「これがんこやりいいで使ってみい。」を「よい」に変えて「これがんこやりよいで使ってみい」とすると自分が使ってよかったからあなたも使いなさいよといった軽い命令口調(お仕着せ口調)になる。

柔らかくするには「これがんこやりよいであんたも使ってみい」とすれば自分は良かったからあなたもどう?という勢いが増す言い回しとなって角がたたずに済む。

で、「易い」を全て「いい」と置き換えて言うかというと(言って言えないことはないのだろうが)そんなことは無い。「よい」は殆どの言葉で使える。

例えば「話し易い」は「はなししいい」とは普通言わない。「はなししよい」と言うのは有る。

他には「言いよい」とは言うが「言いいい」とは言わない。「買いよい」はあるが「買いいい」はない。こういう場合は「易い」を使う。といったような「いい」と「易い」は前の言葉によって使い分けがなされている。ざっと挙げると

「いい」を使っても違和感のないのは

「当てやすい」→「当ていい」・「やり易い」→「やりいい」・「持ちやすい」→「持ちいい」・「打ちやすい」→「打ちいい」・「着やすい」→「着いい」・脱ぎやすい」→「脱ぎいい」・「使いやすい」→「使いいい」・「売りやすい」→「売りいい」・「出しやすい」→「出しいい」・「寝やすい」→「寝いい」・「起きやすい」→「起きいい」・「蹴りやすい」→「蹴りいい」・「弾きやすい」→「弾きいい」・「取りやすい」→「取りいい」「撒きやすい」→「撒きいい」・・などなどきりがない。

「易い」としか普通言わないのは

「言いやすい」・「買いやすい」・「話しやすい」・「放しやすい」・「犯しやすい」・「捕まりやすい」・「転びやすい」などなど。(他にもあろうが。)

これがどういう法則で「いい」にならないのかはいまいち掴めていない。今後の宿題である。

例文

「やあなんだあここんさあの荷物おもいきっさけっからかいちゃってえ。どいてえやあ。」

  (おいなんだよもう、ここにある荷物思いっきり蹴っ飛ばしちゃったじゃないかよ。すごく痛いぞ。)

「ちょう、頼むにい、壊さんでよ大事なもんだで。」

  (ちょっとぉ、お願いだから大事な物なんだから壊さないでよ。)

「んなもん なんでこんな蹴りいいとこなんか置くだあ。」

  (そんなものどうしてこんな蹴り易いような処になんか置くんだよ。)

「とりあえず置いただよ。丁度に置きよいとこないもんでえ。」

  (好い置き場所決まるまでとりあえずそこに置いといたの。)

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