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*やあ

文章の頭に持ってくる時の「やあ」を訳せと言われてもはたと困るのであるが、大雑把に言えば注意をこちらに向ける為の掛け声みたいなもの及び「嗚呼」といった感情の表現と言った感じの二種類か。使い方の一例として

「やあ おんしゃ なにしてるだあこんなとこで えらい久し振りじゃんかあ。なによを。」

  (おおこんなとこで遭うなんて随分とお久し振り。今はなにしてるの?)

聞きなれない人が聞くと「なんちゅう言い草だ」ということになるが、遠州弁においては頻繁に使われる久し振りに会った人同士の再会の挨拶表現である。

基本男言葉で女性の場合は「ほい」・「あんた」が主に使われる。他に男女共用の言い方としては「あれえ」というのがあり「あ」にアクセントポイントがある。

こうした「やあ」の言い方は別に遠州の発明とかではなく、「あいや 暫しお待ちを」とか「や これはご無礼つかまつった」とか「や こいつぁてえへんだ」みたいな江戸時代の頃からの表現の名残りでなおかつ形が変形して「やあ」となって今に至っているのではないかと想像してる。

古語辞典に載っている「や」の意味は「呼びかけに用いる」・「驚いたとき、思いついたときに用いる」とあり。ほぼ遠州弁に「やあ」と同じ使い方ではなかろうか。

遠州は明治期に薩摩言葉から広まったといわれてる「おい・こら」といった表現に染まらなかったということか。まあ勝手な想像だけど。

「やっ」だと緊迫感があるし「や」だと異議を唱える風に聞こえるのであるが、それに較べれば「やあ」となれば多少はゆるい感じになるので使い勝手がいいのであろう。

他の地域はどうか知らないが遠州で「おい」だとほぼ注意・説経が後に続くと解釈されるので「やあ」の方が柔らかい印象を受ける。

発音と意味は感情によって微妙に異なるという幅広いバージョンを有する。

「やあ 勘弁しとくりょを」

  (おーい勘弁してくれよ)

「やあ どんくさいなやあ」

  (もう 動きが鈍いなあ)

「やあ 聞いてるだか?」

  (おい ちゃんと聞いてるのか?)

「やあ どうしっかなあ」

  (うーんどうしようかな)

「やあ何々」と言って「やあ何々」と返すと「やあやあ我こそは」みたいな言い合いの合戦が始まることが多いので注意が必要な場合もある。

「やあ」と投げ掛けられて不同意の場合は「ええ?」と返し同意する場合には「おう」と返すことが多い。どっちでもない場合には「うーん」・「ふーん」とかが多いと思われる。

「やあ どんくさいなやあ」だと「ええ?そうけえ。」(ええ?そうかなあ)・「おう そうだあれ」(うんそうだよ)・「うーんどいだいやあ」(うーんどうだろ)

例文1

「やあ聞いてるだか。」

  (おい人の話し聞いてるのか。)

「やあ横からごちゃごちゃうっさい。」

  (もー、横からごちゃごちゃうるさいよ。)

「人ん親切でゆってやってるだになにその言い草わあ。」

  (人が親切で言ってるのになんだよその態度は。)

「分かったで頼むで静かにしとくりょを。」

  (もう分かったからお願いだから静かにして。)

例文2揚げ足とりの場合

「やあどうしっかな」

  (うーんどうしようかな。)

「やあじゃねえよそんなもんこうすりゃ済むこんじゃん」

  (うーんじゃないよそんなものこうすりゃいいだろうが。)

「いちいち独り言に揚げ足とらんだっていいじゃん。」

「これみよがしにゆうもんでえ。」

  (これみよがしに言うからだよ。)

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