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魍魎の匣

おとろしいのは好きくないので映画館では観ておりませんでDVDで観ました。なんでDVD買ったかというと前作(姑獲鳥の夏)の廉価版DVDがこの映画の番宣的目的で出た時に価格の魅力に負けて買って観たらそれなりに京極ワールドの余韻が離れなかったから次も見てみたいと想ったからであります。でも今回はおとろしくはありませんでした。

で、そんなこんなで観た感想なのですが、色々と湧いて出ますです。良い感想も悪しき感想も諸々に。観終わって直ぐには期待はずれの想いが強かったのですが、いざ感想書く段になると、いや待てよ?と考え直す部分がぼこぼこ出て来てもしかしたら期待を通り越してたんじゃないのか?といつも以上に見直す回数が多い映画でした。

*良い酔い好い

まあホント壮大なストーリーです。良くこんな事思いつくよなあと感嘆するしかありません。物語の展開について物申すことございませんです。さすが映画という勢いです。原作が余程良いんでしょうか。ひっかけや回り道無駄足を踏ませず展開が突き進んでいく王道を感じましたです。

役者パワーが物凄いです。確か堤さんと椎名さんと阿部さんは同い年とかでそこが源流なのかはわかりませんがとても絶妙な掛け合いが魅力です。柄本さんの達観を突き抜けたような存在感も魅力的でした。諸悪の根源をひとり(ひとつ)に全て着せるのではない辺りもアリな展開だと思えましたです。

前半と後半では全く違う映画を観ているような印象を持ちましたです。てんでバラバラの出来事が最後に向かっていくにしたがって段々と繋がっていく様は練り方が半端じゃないなと思えます。時間がしょこしょこ遡ってしまうのは知的過ぎて私の知能では整理するのに頭が膿むので勘弁して欲しいところではありますが、終わってみれば無駄がない作りだと気づく訳で綿密さをホント感じますです。

スプラッターというか猟奇的な部分はえらく頭の中に残像が残る刺激的なものでした。オヤジの歳でよかったです。中坊以下だったら暫く余韻を引きずりそうでした。谷村美月さんがとても効いておられます。

ついでに、ま、どうでもいい感想なんですけど足音がなんかいい音してましたです。

*なんだかなあ

私みたいな素人でも日本ではないと感じられるアジアンチックな街並でした。中国でのロケらしいんですけどこの景色を日本と見立てて観ることは私には出来ませんでした。お社とかは日本での撮影でしょうからそのちゃんぽん具合が私にはついていけませんでした。エキストラの方もおそらく中国の方のようです。見た目の家の作りや運河の雰囲気といい人々の表情といい想像力で補う能力に欠ける私にはついていけなかったです。原田監督は以前「狗神」で古い因習を抱えた日本の負の風景を綺麗に描かれておられる実績のある監督さんなのでこれはもう確信犯的な画なのでしょうが、私にはついてけません斬新さでした。

謎の教団を暴くには陰陽師たる素養が不可欠でなくてはならなかったのですが、他の二つの事件については陰陽師つまり大和心の存在価値が低めでした。前作には和のテイスト満載でそういう意味での厳かな不可侵の領域をそこはかとなく感じたのですが。今回は戦争によって狂ってしまったままの心の歯車を停める純粋な冒険探偵的要素のほうが強く感じられて陰陽師というよりも元関係者という感じの京極堂という装いでした。非常に理詰めで幻想的な空気感が漂ってきませんでした。

加奈子の存在は理解できるのですがその行動と発言は何度見ても理解できませんです。特異な生い立ちゆえの不安定な謎の不思議少女と片付けてしまうしかないのですけどそんなんでいいのかなんかすっきりしませんです。私は揺れ動く思春期の傷ついた乙女心なんてものは理解できないんでしょうか糸口すら掴めませんです。

*以下はネタバレありかもしれませんので、まだ観てない方は読まれない方がよろしいかと

始まりの戦場のシーンは榎木津(阿部さん)が特殊能力を得るに至った経緯の説明かと思って観ていたんですが、それがとんでもない勘違いというか作り手のマジックだったと最後までいって気づきました。パンドラの箱はその時点で開けられていたなんてね。こなくそ見事たばかられたという勢いですわ。こんな感じで繰り返し観てはじめて理解できる部分とかが結構あってたばかられ具合が面白かったと思えた部分と単純に分かりづらいやと思える部分が交差していて微妙で疲れましたです。

関口と言うキャラは前作は永瀬正敏さんが演じておられ今回は椎名さんに変わられて、別にあっそうてな感じで違和感はなかったのですが関係性に馴れるのに時間掛かりました。お二人の役に対するアプローチの違いを楽しむという悦もあるのかもしれませんが、堤さんとの組み合わせからみれば、緊迫感では永瀬さんの関口が、腐れ縁的友情と言う点では椎名さんの関口が見応えありましたです。もっとも前作は関口目線で展開が流れていたせいなのでしょうけど。

陽子(黒木さん)の活躍を象徴する白黒のチャンバラ映画からはとても現代的な印象を受けました。少なくとも私が知ってる昔の時代劇ではなかったです。どういう意図からこういう絵柄を選択されたのか私の頭では理解できませんです。中国の風景を東京に見立てたりとある意味時代考証を意識的にぶち壊していると想像されますがそれがどういうメリットが生じるのか私にはホント分かりません。

戦争のどさくさというのはなんでもアリで溺れるものは藁をも掴むという感じなのでしょうか。戦争に勝利するためあらゆる可能性を探るというのは現実では毒ガスや原爆を産む要因になる訳ですが、空想世界では鉄人28号を産んだりもしてる訳で今回の死なない兵士創りというのもあながちありえないことでもないのかなと思ってもしまいました。鉄腕バーディにも氷室という人物がそういう類の研究してたような。大枚をはたかなければ成就しないような壮大で、しかも決して世界平和の為にではない邪まな研究というものをありえる風に見せるには戦争の狂気が不可欠かつ可能性の説得力を感じさせます。それにしても箱そのもが生命体だったというのは壮大なお話しです。

3つの事件がうねりを上げて重なり合っていくのですが、存外早くにこの3つの接点が提示されます。にも関わらず決着をみるのに大分時間を要する辺りは単なる謎解き推理物とは異なるお話しなのでしょう。京極堂がその重い腰をなかなか上げない展開は前作も同様なんですが、前作は変身したウルトラマンみたいな活躍だったのに対し今回は葛藤(過去からの流れ)を随分多めに含んだ人間っぽい感じでした。そういう部分が陰陽師っぽい感じがしてなかったのかもしれません。

「はこ」については猟奇のトラウマの始まり、建物、厄除け教団のしるしと全てに於いて連なっていて妙を憶えるのですが、「魍魎」についてはその存在は京極堂と関口・京極堂と美馬坂とのやりとりで語られてるのみで、その存在感が画として映っていなかった風に感じます。「狗神」でも狗神そのものを提示されなかった監督さんですので意図的に今回も提示されなかったのでしょうか。人が創りだす物。又は人間そのものが魍魎になるのだから人を映せば良いのだと言う理屈も分かるのですが。姑獲鳥の夏でも具体的な提示はされてませんでしたが映ってないけど何故かそこに何かがいるという空気感を味わえましたのでそこいら辺は不満が残ると言うか想像力の無い私には味気ない部分でありましたです。

エンディングは文字の世界ではありえないだろうなと思える程どうとでも取れる展開になってます。さすが映像の世界と言える訳でこれぞ映画といえなくも無いのですが、箱館からの脱出くらいは見せきって欲しかったというのが素直な感想です。米国映画あたりならそこを見せ場に持ってくるじゃないですか。それを略すことによって和のテイストとしたのだとしたらつれないと感じます。省略するメリットは一体なんだったんでしょうか。

結局つまるところこの作品に私が引き寄せられるのは役者力によるものが大きいのでしょう。画的には中国の風景を日本と言われてもピンとこなかったし、壮大に盛り上げておいて最後は玉虫色にぼかすエンディングも爽快とは程遠い印象でした。物凄い人材に魍魎が憑くと空恐ろしいことになるという始末に負えないお話しということなのでしょうけど関口が最後に京極堂に聞いていた魍魎封じはできたのかいという質問。私も良く判んなかったものでありました。この面子で第三弾が封切られたら観るかと問われれば多分観ると答えますけど人に薦める勇気はありませんです。比べるのは大変不遜ですが、薦めるなら「姑獲鳥の夏」の方をお勧めしますです。

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