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Little DJ小さな恋の物語

迂闊でした。こんないい映画ならせっかく浜松でも上映してくれてたのに観に行けば良かったと悔やんでおりますです。

とにかく冒頭から奥行きのある存在感に満ち溢れた人々が闊歩していて、そこにいるかのような世界に惹き込まれましたです。ご両親が登場してその雰囲気だけで時代を引き戻されました。すごい説得力です。父親の存在感と権限の強さとかそれに従う強き母とかを余分な説明なしにデンと存在していてリアル感が増しますです。まわりの風景だけ時代考証きちんとしたとしてもそこで動く人がどうみても現代人だと想う作品が多い中で、なんか久し振りに味わったタイムスリップ感でした。画的にもろうそくの灯のような温もりみたいな明るさを感じて、くっきり見せることが魅せることには繋がらないものだと改めて想いましたです。

物語は「生きる」というよりも「生きた」という「残ったもの」を描いてるような印象を受けまして、そういう意味ではこの先どうなるんだろうという思いよりも粛々と運命に従って進んでいくという歩みを感じましたです。その一歩一歩を丁寧に描いていて。それでいてテンポ良く進む感覚になるのは立ち止まらない姿勢が芯となっているからでしょうか。

「死」の扱いおいては、消え行く者として扱うのではない後に残る残されるものがそれをなにかしら引き継ぐ連続性というものを柱に据えてあるようです。退院していくものは自らが、生を終えたものには足跡がそれぞれなにかを紡いで次の日に進んでいくようです。「生きる」とはなにかという問いかけというよりももっと漠然としたものを問いかけられるような感じに私は受けました。

サブタイトルになるんでしょうか「恋の物語」というフレーズにおいても神木さんと福田さんはうめえなあと唸ってしまいますです。多少映像特典で神木さんが演技としてではなくリアルにどぎまぎしてたと述べられていたのは興ざめな部分はありますが、そういやあこういう感覚シチュエーションこそ違えど自分にもあったなあと想い起こされました。自分男ですので当然福田さんにその想いを投影してたんですけど何考えてるのか分かんない部分がきちんとあってそうそうこんな感覚だったなあと懐かしい気持ちになりましたです。多少現実はこんな上手く行く筈ねえだろとやっかみ半分な気持ちになる展開でありましたですがそこはまあ映画なんでこれくらい盛り上がらないとと思い留まりましたですけど。

「死(病)」と「恋」と「生きる糧」という豪華3本立てのテーマをひとつの映画にまとめて観たという感じですが、とにかく停滞せずに前へ前へという姿勢で貫かれているので泣ける感情がもよおしてくるのですが例え泣いたとしても爽快さが残る清々しさを感じます。清く生きたという証ゆえなんでしょうか。

とにかくいい映画ですわ。締めるべきとこは原田芳雄さんや石黒賢さんがでんと構えていて、その周りで松重豊さんや西田尚美さんや光石研さんが見守っていてと磐石な布陣のうえに神木隆之介さんと福田麻由子さんが輝いていて役者さん的には申し分ないところです。

シーン的にはスピーカーの配線を辿って行く様は冒険感が漂って感じられて好きでした。画もけっこかったし。それと、たまきと太郎の出会いのシーンが印象的でした。そのあとの同室になっての出会いとのギャップが堪りませんな。捨次と太郎の夜中の待合室でのシーンも良かったです。

神木さんのひ弱な外見ながらもなにがしかの強い芯のある(迷いのない)繊細さは非常に独特でこの人唯一という風にも思えるし。福田さんは悲しい役どころで心に壁を作ることが多く感じられる中で屈託なく笑う無邪気さを魅せるこの役はあまり観ないので新鮮とまでは言いませんがなんかいいです。もし中高生くらいに観てたら「やべえもってかれた」と病院の中心で叫んでもおかしくないくらいだったかもしれないくらいの勢いでした。幸いなことにもうそんな歳ではないので過去に戻る最高の手助けになったなということでありますが。

時代を遡ったことによって若い世代がこの作品に興味を示すかどうかは私には読めませんが、この時代生きていた者としてはリアルに投影できましたです。冷静に考えれば悲しいお話なんですけど観終わっての感想は切なさではなくしっかり生きたという爽やかさを感じましたです。

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