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憑神

面白くやがて儚き男意地。2007年の作品です。

お話し自体が大変よく出来ていて面白いです。それに加えて役者さんが上手い人ばかりだから、金返せこのヤローということは決してない愉しい作品です。みんな生き生きとして江戸の町で暮らしていてすぐタイムスリップできる感覚です。

画が好きです。箱庭みたいな画面の隅々まで作り手の息がかかってるような小宇宙の世界です。野郎はミニチュアの世界に限りない妄想を膨らませて愉しめる生き物ですから、こういう世界は大好きです。細部にまでこだわりというか手(気)を抜かないつくりだから、私みたいなひねくれた性格の人間が画面のはじっこに目を凝らしてても画になってるとこは凄いです。それだけに「ここだけを観てちょ」といったお仕着せな映像ではなく、どこみてもこの幕末期のお江戸の世界観の中に自分がいるような気持ちにさせてくれます。

もちろん俯瞰視線じゃあありませんから、魅せるべきところはきちんと寄って邪念が入らないで(ほらよそ見しないって怒られてる子供みたいな感じで)お話の流れをいうものをストレートに分からせてくれる親切なとこはあります。そこいら辺は役者力を吸い取ろうとする吸血鬼みたいな感覚を持ちますけど。でも吸われてる方も決して厭なわけじゃないというかむしろ本望みたいにも思えるのであります。なんていうんでしょうね、花の蜜(役者力)を集めてもハチミツにはならなくて蜂(演出とキャメラ)が介在することによって美味しいハチミツが出来上がるってイメージでしょうか。舞台とは違った映画だからこそという思いがします。

私的には群集の画がとにもかくにも好きです。子供をいじめてる風に見えればたとえお侍さんであろうと「ちょいとあんた・・・」と義を見てせざるは勇なきなりって江戸っ子気質を感じますし、堤防現場の嵐の去った翌日の人々の疲労感(難は去ったという安心感と疲れたという感情が混ぜこぜになった空気感)が全体に広がる感じとか、江戸のパワーというのがビンビン伝わってきて快感でした。江戸のマナーって狭苦しいとこで大勢の人が接するときのお互いが不快に感じないためのルールのような気がしてるので、正直もうちっとそういうとこ多めに見せて欲しかったなあと欲深いこと想いましたけど。

まあ、個を描いても衆を描いても善しってことでとても好きな画ですわ。

ラストの江戸っ子の心意気を見せる妻夫木さんは、「かっこいい」・「ええ顔してるわ」と素直に思えました。目が輝いてるというか、お芝居でこういう顔作れるってのはやっぱいい役者なんだなと思った次第で。馬に乗ってるだけでそれのアップだけで惹きつけられるんですから大したもんです。セリフなしですよアクションも。絵になるとはこういう事を言うのかなとふと感じました。

エンディングのクレジットは、初めてでいいのかなあ?こんな手があるのかと感心しちゃいました。どうみてもご本人方の自筆署名群ですよねえあれって。音楽も米米クラブさんで軽妙で言葉遊びが映画とリンクしてるようで、映画の持つ世界観と重なってる感じがしてナイスです。DVDで見直したときまずチャプターで最初にエンドクレジット観ましたもん。

それにしても降旗監督といえば「鉄道員」のイメージで凝り固まってる私としては名は体をあらわすというか随分と降り(振り)幅が大きい意外な感じがしたんですが、原作が浅田次郎さんで一緒なんで、偏見というか了見が狭いと反省する次第で。考えてみれば原作・監督・撮影他スタッフの皆さん同一だったんですけど、それにしては全然違う印象を受けたのは確かです。いい意味で裏切られました。江戸のちゃきちゃき感がそう思わせるんでしょうか。

前作はとても叙情的幻想的な記憶があって、今度は疫病神すらひたすら人間っぽく描かれていて、特に香川さんの蕎麦屋の親爺なんて今は絶滅したであろうモロ感覚に素直に行動する典型的な江戸っ子というものを今の世に生き返らせたみたいと思わせてくれますからねえ。生きてたわけじゃないんで決め付けは危険ですけどそう感じたんだからしょうがない。

こういう強引でもなくスムーズに展開して行く物語の進み方とか破綻することなく行き詰ったら勢いで済ますなど決して無い錬り上げた印象を受けます。アイデアと言う名の思いつきではない手練手管の賜物として安心してみていられるのは、さすが活動写真の職人さんという表現が適切な感じがします。私より年長の方が作られるから無意識に大人のやることに納得するというのが染み付いているせいかもしれませんが、間違いなく全てが監督さんの手の内で世界が構築されてるなという感じは確かでしょう。

まあ、長い反抗期抜け出せずに今日に至るひねくれ者の身としては、ご出陣の際の大見得は、もう城内は官軍に支配下にある筈で、あんなことしてたらいくさ場に行く前に見つかって逝っちゃうんじゃないかとボソっと言うくらいが精一杯って感じです。あれがないと締まらないのは確かですけど。

寿司でいえばオオトロみたいな素材が命といよりもコハダみたいな仕事して手間かけた分だけ美味しくなるって喩えでしょうか。でも結構味付けは若いです。色んな事してる感じです。かまぼこにチーズ合わせたみたいな。

別にお仕着せなテーマがあるとは解釈していないのでこの作品観て何を想い感じたかなどと言う気はありません。映画として単純に愉しんでナンボという感想です。勿論、士が死を覚悟したとき如何な覚悟が大事かとか生きるとは死(終わり)を意識してこそ意義が見えてくるとかいうことを、考えれば思い巡らせられないことはないのでしょうけども、深く考えないでストレートに愉しめた者に価値と勝ちが微笑むような気がします。なんか悩むと疫病神がやってくるぞと。

唯一よくわかんないのはオーラスの部分です。意味は理解できてるつもりだけど、必要なのかなという疑問が払拭できません。

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