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松ヶ根乱射事件

おそぎゃー映画やし。

かような作品が田舎に来る筈も無く、当然の如くDVDで観ました。

出てくる人皆リアルで説得力があるんですが、その中でも親爺(三浦友和さん)ががんこいいです。ほんとの他人に対しては善い人で周りに対しては自分がどう思われているかには関わりなく当人が身内知り合いと分類すればひたすらだらしなく頼りまくる。それでいて喰うに困らずあの歳まで生きてこれてるという松ヶ根という町の有り様を指し示す指標みたいでした。誰の子か判らない生まれてくる子供の父親になる男気は神をも恐れぬ所業でおお!とは思いましたけど。でもやっぱ反比例しておっかさは強く逞しい。この他に昼間は居るだか居んだかわからないもの静かだけど夜になると手のつけられない大トラになる奴が出てきたらたまったもんじゃないでしょうこの町は。

「みんな知ってるんだぞ」という言葉が印象に残ります。でも誰もなんにもいいません。ただ見てるだけです。そしてなんか行き詰ったときや雲行きが怪しく自分に都合が悪くなった時に出ます「みんな知ってるんだぞ」。主人公は何故かその最終兵器を持ち合わせていないらしく、代わりに乱射してます。

無かった事にしてしまおうとか見なかった事にしておこうとか、そういうことが可能な町です。でもみんな知ってるんです。「誰も見ていなくても神様はちゃんと見てる」と昔はよく言われましたが、神様とは皆の衆(相互監視)のことで確かに存在してるんだと知らされる思いです。しかもホントの神のごとく迷える村人たちの行いを凡て許す慈愛があるのです。実際なにもかも許されるとしたら堪ったもんじゃありません。なので私はとてもここで暮らしたいとは思いません。作り手の山下・向井両氏はそこんとこどうなんでしょうか聞いてみたいものです。あくまで隣町(よそ)の話しなんで作れると思うんですが。

よくよく考えると変な世界です。いきなり倒れてる女性に小学生が何してるんだ?!から始まり死亡と生存を取り違えたり制服着て役場にとんでもないお願いをしに行ったり、兄が自身の苦悩と不幸を取り除こうとしたときの一番気がかりな事が後が怖いと言うことより、写真回収できないという事だったり。こういうのをファンタジーと呼ぶんでしょうか。

それでいてまとわりつく堪え切れない一歩手前の生殺しのような辛い様々な出来事が妙にリアルで切実で。親爺はリアルに煩悩の海で上手く波乗りしていてその横にいる母はもろに波被りまくりだし、特に兄(光)の呼び寄せた苦悩と不幸なんかはホント洒落になりません。こういうリアルとファンタジーを混ぜ合わせる調合のバランスが私には合うんでしょうか、ついつい引きずり込まれてしまいます。なにも解決していないのに何故か見終わったときにホッとした感情になったのは松ヶ根は明日も来年もこうなんだろうなあと思えたからでしょうか。

殺意も標的もない発砲は、物語の一つの区切りの句読点なんでしょうか。多分何事もなく日常を継続していくためのけじめの一区切りだと思ったんですが、常識で考えれば発砲したら明日が普段の日常である訳がない筈なのに、もしかしたら松ヶ根だったらアリなのかなあと思ってしまいました。

山下ワールドのこの間とテンポは「天才」と呼ばれる理由が納得できます。諸手を挙げて崇拝する気はありませんが、映像特典で「監督はそのうちこういう作品を作ることが許されなくなってくるだろうから・・・」という発言がありましたが、確かにビッグになったら観られない作品なのかもしれないけど、別にこのままでもいいじゃんという気はしてます。

でも、タイトルと内容がかみ合わないと言うか、タイトルから想像する内容と、内容(映画)を観てタイトル見ても、他にあったんじゃない?と考えます。

どことなく「ぼくんち」を連想させる作品という感じの映画です。なので私は好物ですこの映画。映像特典の中でも言ってたネットでの評判で「いい映画だと思うけど、人には勧められない。」というのには私も共感します。本当に宝物なら人には見せないという考えがひとつ。もうひとつは監督が私ら「アホ」に歩み寄るんじゃなく私ら「アホ」が監督に近づくべきであるからです。そのためにはもっと作品を発表していただかないと勉強しようがない。

それと60代のおばちゃん連中が「なんかよく分からん映画だった。」と感想を言われていたけど、あの歳まで生きてると映画としての誇張があったとしてもよくある話ばかりで、それくらいのことでなんで銃撃つほど心が病むのか不思議だったんでしょうかねえ。「イタイ」話しを撮らせたらホント上手い山下監督ですが、おばちゃん達の生き様に比べたらまだまだということなんでしょうか。私は「イタイ」話しは基本苦手なんで、「リンダリンダリンダ」に戻っていただいたほうが嬉しいんですが。

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